球界揺るがした小久保裕紀の無償トレード…非情通告した身に残り続ける苦渋の思い
今年からヘッドコーチで小久保氏が球団に復帰「本当に喜ばしいこと」
小久保が不在の中、皮肉にもチームは阪神を破り日本一に輝く。だが、その裏で“ミスターホークス”と呼ばれた男はチームを去ることを決断し巨人との無償トレードが決まった。
「トレードの話を伝えるのも僕の役目だった。これまで長い付き合いで小久保のこともよく知っている。もう、私も辞める決意ができていた。こんな状況はあまりにも酷かった。だから『小久保、もう飲みに行こう』と誘い巨人へのトレード話を伝えました」
2人は福岡・西新の飲食店で濃密な時間を過ごした。小久保はその翌日に記者会見を開き、巨人への無償トレードが発表された。中内オーナー、根本陸夫、王貞治らと共にチームの基盤を作った瀬戸山氏のホークス最後の仕事はチームの精神的支柱だった男へのトレード通達だった。
このトレードはチーム内でも波紋を呼び同年の優勝旅行をボイコット、ファンからの信頼も失うことになった。それでも、紆余曲折を経て小久保は2006年オフにFA宣言でホークスに復帰。2012年に引退すると、その後は侍ジャパンの監督に就任するなど球界を支え来年からはヘッドコーチとしてソフトバンクホークスに指導者として復帰することになった。
「王イズムを受け継いだ小久保が指導者として戻ってきたことは本当に喜ばしいこと。今シーズン終盤まで優勝争いを繰り広げたロッテには井口監督がいる。これからも球界を盛り上げていってもらいたい。私はもうプロ野球に関わっていませんが陰ながら応援していきたい」
プロ野球界に足を踏み入れ、経営者としての立場としてもホークスが“常勝軍団”になる過程を歩んできた瀬戸山氏。南海の買収、王貞治氏の招聘など大役を全うした男は、これからもホークスの成長を見守っていく。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)