防御率2.77でも「投げ方が分かんない」 広島ドラ3大道が敗戦と引き換えに得た渇望
モチベーションを手に入れ、3年秋のリーグ戦は2試合で完封
ボールが証明した3週間の成果。2年間の積み上げ。この先への渇望。1試合には現在・過去・未来が詰まっていた。
「僕、あの試合、悔しさよりも、『ここまでできた』という気持ちの方が強かったんです。もっと頑張れば、上に行けるんじゃないかって。あの試合がなかったら今の自分、ないので」と大道は言う。「チームは犠牲になったけど」と、指揮官としては言いにくそうに正村監督もこう話す。
「あそこで勝っていたら、今の大道はないかもしれないな。そこからだよ、大道が、あの悔しさをバネに…。あ、悔しくなかったのか。お前は行けると思ったんだもんな」
「はい」と素直に認める大道に「うちのポジティブシンキングが」と笑った。
チームの敗戦と引き換えに、大道はモチベーションを手に入れた。「まだ完封する体力がなかった」と体力強化を課題に真夏のグラウンドを走り込んだ。夕食の後に夜食もたいらげ、体重を5キロも上げた。暑さに打ち勝ち、「ランニングを入れながら体重を増やせた」ことは自信になり、3年秋のリーグ戦は2試合で完封してみせた。
夜明け前が、いちばん暗い。苦しかった春のリーグ戦。手応えをつかんだ全国舞台。希望を見出した秋。ジェットコースターのような3年生の終わりに、大道は「プロ」の輪郭をはっきりとさせる。それには「地獄」と感じた、ある出来事が関係していた。
(高橋昌江 / Masae Takahashi)