「勝つことと育てることは正反対」ロッテ井口監督の“育成方針”と成長認める若手は?

ロッテ・井口監督【写真:荒川祐史】
ロッテ・井口監督【写真:荒川祐史】

主砲離脱とコロナ禍で際立った若手の奮起…井口資仁監督独占インタ第2回

 2020年、井口資仁監督率いるロッテは13年ぶりにパ・リーグ2位となり、4年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)進出を果たした。CSでは2試合連続で先制点を挙げながら逆転負けを喫して敗退。日本シリーズV4を達成したソフトバンクを越えることはできなかったが、指揮官は「今年、来年と繋がるチームになってきた」と手応えを語った。

 コロナ禍で揺れたシーズンに、井口監督はどんな手応えを感じたのか――。

 2021年の幕開けとともに、就任4年目を迎える井口監督の本音に迫る全3回の独占インタビュー。第2回は「育てる」をキーワードにお届けする。

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 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開幕が約3か月遅れた2020年。開幕当初から優勝争いを繰り広げたロッテだったが、決して万全な戦力で臨んだシーズンとは言い切れなかった。前年にチーム最多となる32本塁打を記録したレアードは腰の故障で状態が上がらず、8月に離脱。優勝争いが過熱する10月には1軍選手7人がコロナ陽性と判定され、2軍から11選手が緊急昇格。度重なるピンチでチームを救ったのは、しっかり育ててきた若手選手たちだった。

「我々もピンチをチャンスに変える選手が出ることを望んでいるところだった。結局、離脱した選手の話をしても仕方がない。逆を考えれば、若手にとってこんなチャンスはなかなかない。そこでしっかり掴んでくれた選手がいたのは、すごく大きかったと思いますね」

 レアード不在のピンチをチャンスに変えたのは、井口監督が就任直後の2017年ドラフトで交渉権を引き当てた安田尚憲だった。期待の和製大砲は、プロ1年目の2018年に1軍デビューこそ果たしたが、2年目の2019年は一度も1軍に上がることなく、2軍でシーズンを終えた。1軍に呼んでもらえない悔しさを昇華させ、ファームで最多本塁打、最多打点のタイトルと2冠を獲得。そのオフにプエルトリコのウインターリーグも経験した安田は、昨季開幕1軍入りを果たした。

 開幕当初は打率1割台と低迷したが、井口監督は「彼はもう下(2軍)でやることは何もない。下にいても当たり前のように打てる。あと伸びしろを広げるのは1軍での経験でしかない」と1軍で起用。さらに、7月21日の西武戦で4番に抜擢すると、86試合連続で使い続けた。

「今年は開幕からずっと1軍に置いて、どのタイミングで試合に出そうか悩んでいたんですけど、『出すからには4番』という想いはありました。実際にレアード以外に4番を打つ選手もいなかった。安田は選球眼がいいから出塁率が上がるので、とりあえず繋ぐ4番で起用しようと。後半ちょっと調子が落ちて来た時、周りからいろいろな意見はありましたけど、我慢しないと育たない。打順を下げたり、スタメンから外すのは簡単。育てるって本当に難しいんですよ。今年も含めて、来年、再来年……、先を言えば5年後、10年後のマリーンズを背負って立つのは彼。そういう想いを伝えたい意図もありました」

 突然降ってきた大役。思うような結果が出ない安田は頭を悩ませ、気に病む時もあったが、ベテラン鳥谷敬の「準備をしっかりするように」という教えを胸に、戦い抜いた。成果となって現れたのが、CSだ。安田は第1戦で2回に先制2ランを放つと、第2戦も初回にタイムリー二塁打で同じく2点を先制。ソフトバンクが誇る鉄壁の投手陣に襲い掛かった。

「シーズン中はずっと4番を任せていたけど、最後の1か月くらいですかね。毎日特打をやるようになって、自分の中で何かが掴めたんでしょう。その結果がCSで出て、いい形でシーズンを終えられた。課題だった守備が急成長したこともあって、自分の中の不安が解消されて、打つ方に集中できたのかもしれません。今年は3割、20本塁打以上は期待できるんじゃないかという想いはあります」

「経験値が上がれば、メジャーに行った秋山翔吾選手以上になる」

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