“甲子園なき夏”に疲労骨折 秋を棒に振った東海大菅生の主将がベンチで得た糧
代替大会の昨夏は西東京大会、そして東東京王者・帝京との東西決戦を制した
第93回選抜高校野球大会の出場32校が29日、毎日新聞大阪本社のオーバルホールで発表され、昨夏と昨秋に2季連続東京王者に立った東海大菅生が選出された。「2年前に準優勝で行けなかった悔しさもあり、今回は文句なしというか、東京を代表して優勝目指してやっていきたい」と若林監督。「選抜は4度目ですが、選抜ではまだ未勝利。一戦必勝で日本一を目指したい」と晴れ舞台での雪辱を誓った。
喜びに沸くナインの中、誰よりも感慨深い表情でこの日を迎えたのが榮塁唯主将だ。昨夏の代替大会直前から痛めていた右肘を、東西決戦9回裏のバックホームの際に疲労骨折。肘にボルトを入れ骨をつなぐ手術を受け、秋の大会を棒に振った。
「正直、秋大会までは主将として試合に出られず、悔しかった」と言いつつ、「でも、そのぶん逆に色んな景色を見られてプラスになった」と榮主将。ピンチやチャンスの場面でのベンチの雰囲気や裏方仕事など、グラウンド上ではわからなかった発見が多々あったと言い「今まで見たことのなかった、見てこなかった景色がたくさんあった。新鮮で、試合に出るのとはまた違った楽しさがありました。チームの素の姿を見られたのは、主将としては貴重な経験になった」と収穫を語る。
また、大半が寮生の東海大菅生の選手たちにとって、唯一の楽しみが寮の食堂が定休日となる日曜練習後の外出。近くのショッピングモールでお菓子を買ったり、寮とは違ったジャンルの食事で胃袋を満たしたり、離れて暮らす両親と久々の再会を喜んだりと、羽を伸ばせるまたとない機会だったが、コロナ禍でその外出禁止を余儀なくされた。
「正月には春の緊急事態宣言ぶりに実家の愛知に帰りました。センバツでは支えてくれる両親に最高のプレーを見せたい」と榮主将。夏には右肘を引き換えにしても届くことのなかった聖地への切符をつかんだ。
(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)