22歳審判員にも最高の教材 楽天・田中将大の抜かりない“ストライクゾーン”調整
石井監督「審判と選手はオープン戦でお互いに確認作業をする」
8年ぶりに楽天に復帰した田中将大投手は9日、沖縄・金武キャンプ合流後2度目のブルペン入り。初めて捕手の背後に審判員が付き「ストライク」「ボール」をコールした。田中将にとってストライクゾーンは、使用球やマウンドなどと並び、日米の違いへの対応を求められる課題のひとつでもある。【宮脇広久】
この日は、伊志嶺ブルペン捕手を左打席と右打席に交互に立たせ、「インハイ、高めいっぱいのストライク」などとコースを細かく予告しながら、実戦さながらに変化球を交え54球を投げ込んだ。その田中将の球を“ジャッジ”したのが、NPB審判3年目・22歳の西沢一希審判員。現状では1軍の試合を担当できない「育成審判員」で、2軍戦で経験を積みながら昇格を目指している立場だ。
田中将は外角のスライダーを「ボール」と判定されると、「ウォー!」と残念そうに雄たけびを上げ、西沢審判員に「ちょっと外れてますか? 低い?」と問いかけるシーンも。すかさず捕手の下妻が「(ボールと判定されたのは)キャッチングのせいです!」と頭を下げ、田中将は「そんなことない。ボールはボールやから」と応じた。
5球連続でボール判定が続くと、「いい加減ストライク投げよう!」と自らを鼓舞。さらに、外角ストレートをボールとされると、「今の、高いですか?」と確認した。日米通算177勝右腕のオーラを真正面から受け、若手の西沢審判員にとっては緊張の時間だったかもしれない。
自身も現役時代に日米通算182勝を誇った石井一久GM兼監督は、「僕の時代は、メジャーのストライクゾーンは日本に比べてボール1個から1個半、外角が広く内角が狭かった」と証言。多少なりとも審判によって個人差もあり、田中将がいなかった7年間に日本のストライクゾーンの傾向が変わった可能性もある。
それでも、石井監督は「審判も選手同様に毎年オープン戦で、調整というか、お互いに(ストライクゾーンの)確認作業をする」と実情を明かし、「田中投手はコントロールが良くて、そこさえ確認できれば、ある程度狙った所に投げられるので、あまり心配はないと思う」と語った。
田中将は練習試合やオープン戦で、相手打者はもちろん、球審の反応や傾向を探りながら投球することになりそう。石井監督が「2月中に1度くらいは実戦で投げてほしい」と、3月26日の公式戦開幕までになるべく数多くの実戦マウンドを踏ませたがっているのも、そういう事情があるからなのだろう。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)