「サボっている人には訪れない」 元西武右腕が語る、イップスを克服した瞬間
日本生命4年目の春、ギックリ腰明けのケース打撃登板の際に“克服”
その開幕戦の初球で突然イップスになった。「結局そのシーズンは棒に振りました。腰を痛めたりもしましたが、秋のリーグ戦もダメで、ベンチを外れてスタンドで応援していました。最終的にはベンチに入れてくれて抑えみたいなことをやりましたけど、それもヤケクソで投げているみたいなもんでしたね」と振り返る。
当時はどんな練習でイップス克服を試みたのだろうか。「あまり覚えてないんですよね。自分が情けないという思いばかりで。自分たちの代になった時に、自分だけ置いてけぼり。みんなもイップスと知らないから『いい加減にしろ』みたいなことを言うし」と孤独と苦悩を味わった。
卒業後は社会人の日本生命に進んだが、ここでも3年間イップスに苦しんだ。「バッティングピッチャーをやると、ケージの横に立っているコーチに当たる気がするんです。怖くて、周りに人がいない時じゃないと投げられない」という状況が続いた。
転機は突然やってきた。社会人4年目の春先、ギックリ腰で10日ほど練習を休んだ後にケース打撃でマウンドに上がった。「ケガ明けだったので、あまり何も考えず、何気なく投げたんじゃないですかね」。“無欲”で投げた初球の外角球を打者が空振りした。
「たまたまいいボールがいって、バッターが空振りしてくれた。全てのタイミングが良かったんでしょうね。その時の気持ちは今でも覚えています。あれっ? 野球ってこんなに簡単なスポーツだったんだと。投げれば空振りするじゃんって。そこから投げるのが楽しくなって、投げれば抑えるからうれしくて」