折れた木製バットはどうなる…? “箸だけじゃない”意外な再利用方法とは

折れたバットが靴べらに大変身、無駄にしたくない職人の技術

「自分は現役時代に使っていたバットは、靴べらになりました。メーカーさんにお願いして、今でも大切に使っています。捨てるくらいならば、スポーツメーカーさんに相談してもいいと思います」

 バット1本作るのに、どれだけの人の力と時間がかかっているかは、身を持って感じている。プレーヤーでなくても、野球に携わる人間として、それを失うことはない。

「主力選手になればなるほど、大事にしていると思います。梅雨時になれば乾燥剤を使ったり、ネットに掛けて干しておいてください、と頼まれたりしたこともありました。5グラム、10グラム、いや、1グラム単位の重さにこだわりや、繊細な感覚を持っています。選手も一流。バットを作る人も一流ですから」

 よくベンチでグリップを拭いている選手を見かける。滑り止めのスプレーが付着していたり、汚れやほこりがついていると、グリップの太さが変わり、感覚もずれて、バッティングに影響することもあるという。「選手も一流、作る人も一流」――高い技術はこのような感覚から生まれてくる。

「バットは大事な資源ですし、名人と呼ばれる作り手さんがいます。その人の思いが1本、1本に込められています。無駄にはしたくないです。例え折れても、リサイクルというか、魂のこもったものはいつまでも長く使ってほしいです。バットはボールを打つ道具です。ふざけあうものではないし、雑に扱って欲しくないですね。子供たちにも大切にしてもらいたいなと思います」

 折れたバットは生まれ変わることができる。形が変わったとしても、使った記憶とともにずっと心に残るものであってほしい。

【写真】折れたバットが靴べらとなって玄関に…

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