菊池雄星が命運かけた“制球重視”の投球フォーム 思い出す岩隈氏の6年前の言葉
特任コーチ、岩隈久志の存在が見えない力になる
今キャンプには、2018年までの7年間マリナーズに在籍し、昨季限りで巨人で現役を退いた岩隈久志氏が特任コーチとして参加している。すでにメンタル面に関する助言を受けたことを明かしたが、菊池が最も感銘を受けたのは「コントロールを一番大事にしている話」だった。岩隈氏は、バットの芯と軌道を外す、緩急を駆使した投球で日米通算170勝を挙げている。
忘れられない言葉がある。
2015年の8月12日、地元シアトルで岩隈氏は野茂英雄氏に次ぐ日本人投手2人目のノーヒッターを成し遂げた。その試合後だった。開催中だった夏の甲子園で、オーロラビジョンに出る球速表示が観客の気を引いていることについて、岩隈氏はこんなメッセージを発した。
「僕は速いボールを投げるわけじゃない。速いボールを投げて自己満足する世界ではやっていない。いかにコントロールで勝負をするか、どうやって、いかにアウトを取っていくかを考えてやっているので。その結果がこういう形で結びついたので、これがお手本になってもらえたらというふうに思います」
岩隈氏は、かつて楽天に在籍し、東日本大震災から復興を願う思いは強く、「希望」の刺繍を入れたグラブを手にマウンドに上がっていた。岩手県出身の菊池とつながったのも、縁を感じる。菊池は「シーズンが始まるといろんなことが起きますので、その都度、話を聞いてみたい」と、心強い存在との出会いに感謝した。
過去2年連続で黒星が先行し、防御率はいずれも5点台。メジャー3年目へ向けた菊池はその心境をこう表した。
「このチームが好きだし、監督やコーチ、選手とは2年間、一緒に戦ってきた仲間ですから。特に監督はずっと信じてくれているので。今年、来年と、しっかりと数字を残すことは自分の責任として感じています」
メジャーでの適応をずっと待ち続けた周囲の視線はもはやこれまでとは違う。メジャー3年目の菊池雄星に求められるのは、結果しかない。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)