“戦力外覚悟”から掴んだ最速161キロ DeNA速球王に成り上がった国吉の探求心

球質アップへ“キックボクシング”「165キロを狙いにいくわけではないが…」

 筋トレでは肩回りも強化。徹底的に追い込んだ。Tシャツのサイズは「3XL」。体重106キロと巨大化した。「筋トレだけやっていればいいか、といえば、そういうわけでもない。逆にランニングだけが下半身強化だ、というのも違うなと思っている。バランス良く、どっちもこなすべきだと思っています」。自分に合っているトレーニングは何か――。この探究心が最速161キロの剛速球を生んだ。

 固定概念にとらわれない。このオフは作り上げたパワーを効率的に発揮することを課題とした。昨年12月、福井県内の接骨院を訪問。股関節の可動域や柔軟性を向上させるため、格闘家のようにサンドバッグを蹴る独特のメニューを導入した。きっかけは、母校・秀岳館高野球部の後輩の意見だった。「しなやかに、しっかりボールに力を伝えられるような投げ方に。イメージした動きにより近づけるために行っています」。キャンプ地にもサンドバッグを持ち込んだ。48歳での現役復帰を目指した新庄剛志氏も行ったトレーニングで鍛錬を積んでいる。

 春季キャンプ中は自室でYouTubeやSNSのスキルアップ動画を漁る。2018、19年サイ・ヤング賞のジェイコブ・デグロム(メッツ)、ゲリット・コール(ヤンキース)ら異国で活躍する投手のフォームからヒントがないかを探っている。「必要なことは簡単に手に入る時代。どんどん深く掘り下げていけば、新しい発見もあるし、面白い。部屋では動画しか見ていないです。キャンプ中はテレビを付けていないですね」。

 ロッテからレッドソックス入りした澤村拓一投手は32歳の昨季に自己最速159キロを記録した。これも自身の刺激となったようだ。「澤村さんはベースがしっかり出来上がっているからこそ。30歳すぎると体が衰えてくると言いますけど、ベースができていれば、30代からでもレベルアップできる」。年齢に負けるつもりはない。

 160キロ超の剛速球は何よりも自身の持ち味だ。ただ、球速にこわだりはないと言い切る。「160キロが出たからバッターがアウトになる競技ではない。150キロでも140キロ台でも結果的に抑えられれば何キロでもいい」。だが、どこかファン目線の自分もいる。「見ているファンの方は注目しているポイントだと思う。165キロを狙いにいくわけではないですけど、抑えにいく中で出るのであれば。強いボールを投げ込めるんだったら、それでいいです」。

 戦力外をも覚悟した2018年オフから成長を遂げて、今やチームに欠かせないセットアッパーとなった。打者を制圧する剛速球、日本最速球の更新だって期待したくなる。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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