恩師ノムさんばりの“弱者の兵法” 楽天・石井監督ご満悦「ああいう攻撃は大事」
コロナ禍で新外国人に来日のメド立たずスモール・ベースボールに磨き
■ロッテ 8-4 楽天(オープン戦・10日・静岡)
楽天の石井一久新監督は10日、ロッテとのオープン戦(静岡)に4-8で敗れたが、3点ビハインドの5回に恩師の故・野村克也氏ばりの“弱者の兵法”を駆使。一挙4点を挙げて一度は逆転した。指揮官は「外国人選手に来日のメドが立たない中、ああいう攻撃は大事」と胸を張った。
3点を追う5回、ロッテ2番手の左腕・中村稔を攻め、5連打で一気に同点。なおも無死一、三塁としたが、続く茂木は浅い左飛に倒れ、走者が釘付けのまま1死となった。ここで19歳の成長株・黒川が左打席に入る。カウント2-0からの3球目。石井監督は一塁走者・田中和を走らせた。黒川は外角の139キロ速球を強引に引っ張り、二ゴロを転がして三塁走者を本塁に迎え入れ、一塁走者も二塁へ進めたのだった。
内野ゴロでの併殺が怖い場面で、一塁走者を走らせ、打者にとっては逆にゴロさえ打てば得点が入る状況を作った。“弱者の兵法”を掲げたノムさんも監督時代、バットにボールが当たった瞬間に三塁走者にスタートを切らせる“ギャンブルスタート”とともに、多用した作戦だ。
石井監督は「エンドランでゲッツーを封じ、1点を取ることができた。黒川もしっかりゴロを打ってくれた。外国人選手がいない中、ああいう細かい野球がすごく大事」とご満悦だった。
楽天打線はコロナ禍で、新外国人のブランドン・ディクソン内野手、ルスネイ・カスティーヨ外野手に来日のメドが立たず、助っ人不在の現状では破壊力不足を否めない。1点を取りにいくスモール・ベースボールに磨きをかけるしかない台所事情がある。「野村さんに教わったことを生かし、自分なりにアレンジしながらやっていきたい」と言う石井監督だけに、腕の見せ所といえるかもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)