甲子園の熱気は「自分たちを変える」 戻ってきた球音…選手たちが感じた思い

好投の仙台育英・伊藤は1年夏に苦い記憶が…

 第2試合では、強豪対決となったが仙台育英が2年生・古川翼投手、3年生・伊藤樹投手の好投手リレーで明徳義塾を1安打完封。勝利を収めた。

 試合の主役だったのは4回途中から無安打無失点に封じた伊藤だった。1年夏に甲子園のマウンドに立ったが、奥川恭伸投手(現ヤクルト)のいた星稜に立ち向かった準々決勝で先発KO。苦い記憶があった。昨年夏は原則無観客(保護者ら一部は入場)だった交流試合でも甲子園の土を踏んだ。

「2年前の夏は、あれだけすごい数の観客、大きな歓声がありました。自分が小さい頃から見ていた甲子園。気持ちはすごい上がりました。でも昨年は保護者の方くらいしかいませんでした。試合で観客がいると感じることは、自分たちの心を変えるものだなと思いました」と、この試合は声援によって自分の力が発揮できたと振り返った。

 関東王者の健大高崎(群馬)は投打が噛み合い、第3試合で下関国際(山口)に勝利。青柳博文監督は勝利の率直な感想を問われると、「昨年、先輩ができなかった試合を後輩たちがさせてもらい、勝利することできた。感謝と強い気持ちが選手から伝わってきました」と戻ってきた甲子園への思いを語った。

 また、仙台育英に敗れた明徳義塾の名将・馬淵史郎監督は昨夏の交流試合では「やっぱり甲子園はいいですね」と“無観客”でも試合ができた甲子園について感慨深げに話していたが、この日はもう違った。勝負に徹し、敗れた悔しさが会見でこみあげていた。冷静に敗因を分析し、仙台育英の投手、走力を称え、夏への課題を明確にしていた。

 甲子園は人々の思いが交錯する。夢でもあり、目標や大切なものが何かを再確認する場所でもある。仙台育英・島貫丞主将の選手宣誓の言葉には「希望。失った過去を未来に求めて希望を語り、実現する世の中に」という言葉があった。それぞれが感謝の思いを持ち、スタートラインに立った。戻ってきた球音が合図となり、新しい未来に向かって甲子園が動き出した。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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