JR仙台駅の横断幕がつなげた絆… 押し出し四球で甲子園逃した柴田元エースの思い

仙台大では現阪神・馬場とチームメート、4年秋にはMVP

 公務員志望から一転、岩佐さんは地元の仙台大に進学。馬場とチームメートになり、仙台六大学リーグで活躍した。3年秋と4年春にベストナインを獲得するなど、通算23勝3敗。3年秋と、MVPに選ばれた4年秋にはリーグ優勝に貢献した。

 卒業後はJR東日本東北入りしたが、2年目に右肘を痛めた。ある日、ブルペンで投球練習をしていると、「投げた瞬間、ボールが真横に飛んでいったんです」。腕を振り切ると、手に痺れが走った。「滑りましたわぁ」と平静を装い、次の球を投げたが、今度は「ブルペンの上のネットに行きました」。腕に力が入らず、リリースポイントまで持って来られない。コーチに「肘が痺れて投げられません」と伝え、病院に行った。PRP治療を受け、3年目の春には投げられるようになったが、登板機会はめっきり減少。チームからの引退宣告は覚悟していた。

 母校・柴田が東北大会準優勝で選抜出場を引き寄せたタイミングで、ユニホームを脱いだ。会社に残り、「実習でお世話になったので」と希望したJR新庄駅で昨年12月末から勤務している。仕事は大変だが、野球で培った高いコミュニケーション力を発揮し、駅の利用客との会話が楽しいという。対応の遅れで苛立たせてしまった利用客に気の利いた一言をかけ、満面の笑顔を引き出した時には先輩社員から「どうして、そういう対応ができるの?」と驚かれた。

 日々の業務に励む最中、母校の選抜出場が決定。すぐにJR東日本東北野球部のマネージャーを通して会社から「仙台駅に横断幕を飾りたい。高校との対応をお願いしたい」と連絡があった。驚いた岩佐さんだったが、「是非、やらせてください。お力になれればと思います」。柴田・平塚誠監督に連絡し、2月上旬、担当者らと横断幕のデザインを持って母校を訪問した。

横断幕に描かれたのは“第2校章”「Never Say Never」

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