「これで良かったと思う」 天理“エース不在”でベスト4敗退も手にした夏への収穫
登板回避の達「メジャーリーガーという目標があるので故障したら意味がない」
天理(奈良)は東海大相模のエース左腕・石田を攻略できず0-3で敗れ決勝進出を逃した。最速148キロ右腕・達孝太投手は準々決勝の仙台育英戦で左脇腹を痛め登板を回避。中村良二監督は試合後、「今日はベンチに入っている残り3人のピッチャーでいこうと考えた。これで良かったと思う」と語った。
ここまで459球を投げ抜いたエース達に肩肘の異常はなかった。だが、準々決勝後に左脇腹の違和感を訴えこの日のマウンドに上がることはなかった。前日の夜に中村監督は「もう投げないよ」と背番号「1」に伝えると、それを受け入れるようにうなずいたという。試合途中ではブルペンで肩を作っていたが「100%なかった」とリリーフでの登板も考えていなかった。
今大会では自己最速の148キロをマークし、チームのエースとして力投した達も「長く野球をするのなら今日は投げるべきではないと。メジャーリーガーという目標があるので故障したら意味がない」と、冷静に自身の体と将来を見据えての登板回避だったことを口にした。
脇腹の怪我は無理をすればプロ野球の投手でも長引くこともあり、本来の投球フォームを見失う恐れもある。選抜はベスト4で敗退となったがチームはまだ夏もあり、達にとっては日本を代表する投手になれる可能性もある。それだけに指揮官も「本人に聞けば投げたいと言ったでしょうけど。脇腹は怖いですから。これで良かったと思う」と、迷いはなかった。
先発した背番号「17」の仲川一平投手は初回に失点したが8回7安打1失点の好投。「達だけじゃないところを見せたい」と気合十分の左腕は全国の舞台で大きな自信を得たに違いない。
決勝進出を逃したが達に続く投手の台頭など収穫十分の今大会を中村監督は「この甲子園で4試合戦えたことが本当によかった。僕の中では大満足」と言い切った。まだまだ成長を続ける天理ナインは一回り大きくなって夏に帰ってくる。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)