帽子に記した亡き従兄の名 選抜準V明豊エースがともに戦った決勝戦
第93回選抜高校野球決勝、初優勝目指した明豊は東海大相模に惜敗
誰かの為に頑張る人は本当に強い。明豊(大分)のエース・京本眞投手は聖地・甲子園での投球を捧げたい人がいた。難波創平さんは京本の従弟。「創平も野球を昔やっていたのでほぼ毎日キャッチボールをしてもらっていました。ほんまのお兄ちゃんみたいな感じでしたね」。そんな創平兄ちゃんとの急な別れは、くしくも夢を抱いて入学を決意した明豊の入学試験の日だった。【市川いずみ】
交通事故。まだ19歳の若さだった。「目標を見失うというか、一気に頭が真っ白になって、野球のことすら考えられない。2週間くらい外にも出られませんでした」。試合会場が遠くても、いつも足を運んで応援してくれた。もう一緒にキャッチボールをすることはできないけれど、可愛がってくれた創平兄ちゃんのためにできることは何かを考えたという。
「暗い表情をしていたら創平も悲しむと思いました。誰よりも努力して有名になってプロ野球選手になって、天国で良い姿を見てもらえるように頑張ろうって思います」
エースの座を掴んで挑んだ初めての甲子園。「甲子園も創平がどこかから見てくれている」と気合を入れた初戦の東播磨(兵庫)戦。先発マウンドに上がるも「力んで空回りしてしまった」と振り返ったように2回1/3を投げ4失点で降板。「不甲斐ないし、情けない」と反省の言葉が並んだ。
2回戦・市和歌山戦では登板はなく、次のマウンドは準々決勝・智弁学園(奈良)戦の先発マウンドだった。
初戦とはまるで別人。小気味よく智弁打線に投げ込んでいく。任された3回を2安打無失点に抑えベスト4進出への流れを作った。準決勝の中京大中京(愛知)は6回からマウンドに上がり、3回1/3を投げ1失点。相手打線を抑え込み、チームを初の決勝戦に導いた。