帽子に記した亡き従兄の名 選抜準V明豊エースがともに戦った決勝戦

明豊・京本眞の帽子に記された“創平とともに”の文字【写真:編集部】
明豊・京本眞の帽子に記された“創平とともに”の文字【写真:編集部】

決勝戦は同点の8回に登板、しかし、サヨナラ負け…

 いよいよ迎えた東海大相模(神奈川)との決勝戦。出番がやってきたのは2-2の同点で迎えた8回だった。創平兄ちゃんに届ける好投を。“創平とともに”と記した帽子、そして刺繍を施したグラブを手に、日本一へ向けてのマウンドへ上がった。

 1死を奪った後、5番百瀬、6番佐藤に連打を許すも続く、7番小平を併殺打に打ち取り、ピンチを凌いだ。明豊の9回表は無得点。黄色のグラブをギュッと握った。先頭の8番深谷に内野安打を許すとその後申告敬遠などで1死満塁。甲子園で投じた174球目。前進守備の遊撃手のグラブを弾いた白球は無情にも黒土の上に転がった。「ごめん、ごめん……」。整列時には俯きながら謝ることしかできなかった。それでも閉会式ではしっかり前を見据える京本の姿があった。

 大会を通じて、マウンド以外でも京本の姿がよく目に留まった。初戦で降板した時から、ベンチにいるときは常に1番に野手を迎え、打席に向かう選手のサポート、伝令。投げるだけではない、エースのあるべき姿を見せていた。創平兄ちゃんはきっと笑顔でこう言ってくれただろう。

「準優勝おめでとう!」

(市川いずみ / Izumi Ichikawa)

市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。

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