社会人出身の投手がプロで“苦戦”する理由とは… 小林雅英氏が自身の経験から分析

自身が東京ガスでプレーしていた当時は金属バットが使用されていた

 一方、社会人選手は仕事と野球の両立が必要になる。「サラリーマンなので仕事もしなくてはいけないし、技術的にもまだまだ未熟な選手が多いので基本的なことからアドバイスする必要もある」と指摘。そして、職場の同僚らへの感謝の思いがなければならないと力説する。「会社や周囲の同僚たちが野球をする環境を作ってくれて、応援もしてくれるわけですから。都市対抗など主要大会はトーナメントですし、1試合に対する熱量はプロよりも高いと思います」。

 日体大時代はプロからの評価がそれほど高くなかった小林氏。ドラフト上位での指名を決意して東京ガスに進み、実際に1998年ドラフト1位(逆指名)でロッテに入団した。「社会人の2年間でプロに行くことができなければ諦めようと思っていました。3年目はないと決めていた。自分の考え方が変わると行動や野球に対する取り組み方が変わったし、同じ練習をしても吸収力も変わってきます。自分の経験を踏まえて、エイジェックで上を目指す選手に伝えていきたいですね」。

 自身がプレーしていた頃、社会人野球では金属バット使用が認められていた。必然、投手のレベルは上がったという。「金属だと折れることがないし、ある程度、芯を外しても打てる。プロのスカウトに認められるには投手も技術を上げて抑えていかなければならなかったので試行錯誤を重ねました」。社会人時代にプロの世界でも通用する技量が備わったと振り返る。

 近年、社会人出身でプロ1年目から活躍する投手が少ない原因はそこにあるとも指摘する。「今は社会人も木製バット。社会人は抑えられても、プロのレベルになるとそう簡単にはいかない。そんな現状でもプロに入ってすぐに新人王を狙えるような投手を育ててみたい気持ちがありますね」。かつてロッテの絶対的守護神として“幕張の防波堤”の異名を取った小林氏が、新たな目標に向かって走り出す。

(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

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