ド軍ターナーとの頭脳戦 ダルビッシュが見せた妙味あふれる“3打席勝負”
勝ち星こそつかなかったものの、冴えた“駆け引き”
持ち味の多彩な変化球を配した投球が冴えを見せたこの日、“頭を使った”駆け引きが印象的だったのは3番ターナーとの勝負だった。
1回表の立ち上がりに、ここ数試合で「抜けがいい」と好感触を得る球速が異なるカーブを決め球にして2死を奪った。しかし、ターナーには、カーブを使わず2球で追い込むと、最後は外角への95マイル(約153キロ)の直球を選択。3球で見逃し三振を奪った。切れ味鋭い曲げ球を「そろそろ投げてくる」という意識を捨てられない打者心理を揺さぶる速攻は、次の打席に布石を敷いた。
4回の第2打席、速球系に置いた相手の意識を逆手に利用した。一転して、初球から直球を投げ込むと、2球目のファウルで直球狙いを確認。1-2からの4球目、決め球はスピードと軌道を変える89マイル(約143キロ)の外角カッター。ターナーの体を泳がせ、遊直に仕留めた。
そして6回の第3打席、初球にカッターで誘いファウルを稼ぐと、次はスライダーで幻惑。0-2からの決め球は、内角高めの80マイル(約129キロ)のカーブ。1打席目とは逆に、直球を封印して見逃し三振を奪った。1、2打席目の残像を巧みに利用し、打者心理を読み切ったターナーへの10球は、妙味あふれる配球だった。
9回にダメ押しのソロ本塁打を放ったターナーを“頭”で封じたダルビッシュは、先制点に絡む5回の7番ライリーに打たれたポテンヒットを「運がなかった」と振り返った。
前夜は、延長12回までもつれ、クロネンワース二塁手も投入した9人の救援リレー。2登板連続して救援陣の負担を軽減する7回をダルビッシュは投げ切った。
技術力、精神力、そして運――。勝利に足りなかったのは一つだけ。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)