デビュー戦は11のアウトを全て三振 前田健太、千賀滉大らを彷彿させる台湾の20歳右腕
球数を制限、3年計画で育成中
徐若熙をなぜ早く降板させるのか、「過保護」ではないかと疑問を持たれた読者もいるだろう。実際に台湾でもそうした声は出ている。味全では徐若熙がまだ若いこと、高校時代と昨年の2度、肘の骨棘を切除する手術を行っていること、高校時代も救援が主だったことなどを考慮した上で、概ね1試合4イニングないし70球まで、多くても5イニング80球とする方針を定めている。こうした球数の制限についてはグレッグ・ヒバード投手コーチに一任されているというが、葉君璋監督も「今季は年間100イニング以上投げさせることはない」と明言。「3年計画で一般の投手並みに球数を増やしていく」と述べている。
しかし、上限を「75球、5イニング」に設定して先発した4月3日の統一ライオンズ戦で予期せぬ事態が起きた。初回、2三振を含め3者凡退に抑えたが、冴えない表情でベンチに引き上げると、葉監督、ヒバード投手コーチ、トレーナーらが徐を取り囲んだ。2回も続投したものの、連続安打でピンチを招き、3人目の打者への初球が外角に大きく外れると、葉監督はベンチを飛び出し、ブルペンで準備させていた廖文揚にスイッチした。
試合後に発表された交代理由は左膝の「膝蓋腱炎(ジャンパー膝)」だった。葉監督によると、3月23日の楽天戦で違和感を覚えたといい、ほぼ回復したため先発させたが、2回以降は制球が乱れてベースカバーもできなかったため、交代を決断したと説明。「膝を痛めたまま無理させると、今度は肩を痛めることになる」と述べた。
登録抹消と休養を経て中10日での先発となった14日の中信兄弟戦は70球を上限として登板。速球主体の組み立てで2回までに3つの三振を奪い、最速153キロをマークしたものの、3回途中から速球が高めに抜けるようになり、甘いコースに入った球もあった。また、初登板で三振の山を築いたスプリットチェンジもほとんど投げなかった。4回は球速も落ち、先頭打者に四球を出したが、次の打者を併殺打に打ち取った場面で降板。3回2/3を48球、無安打、1四球、3奪三振、無失点という内容だった。本人は試合後、身体は問題ないと強調。「ブルペンでの調子は良かったものの、久しぶりのマウンドで制球に苦しんだ」と語った。
本人にとって、この2試合はいずれも納得のいかない内容だったといえそうだが、プロでのキャリアは始まったばかりだ。今後、大きな怪我にはくれぐれも気をつけながら、先発として十分な球数を投げられるようフィジカルを強化してもらいたい。そして、台湾プロ野球を代表する投手に成長し、国際大会で活躍する姿も見てみたい。何よりもこうした見る者をワクワクさせるスケールの大きい投手が生まれたこと、特に復活した味全ドラゴンズに新たなスター選手が生まれたことは、台湾プロ野球全体にとってもすばらしいことだといえる。今季は各チームで2000年以降生まれの若い投手が活躍している。彼らが互いに刺激を与え合うことによって、リーグ全体のレベルアップにつながることを期待したい。
(「パ・リーグ インサイト」駒田英)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)