なぜ飛距離が伸びる金属バットは良くない? 打者だけでない“投・守”に及ぼす弊害

なぜ金属バットの性能を見直すべきなのか

 そもそも、なぜ金属バットの性能を見直さなければならないのか――。

 かつては木製バットが使用されていた高校野球で、金属バットが導入されたのは1974年のことだった。木製バットは折れやすくコストがかさむため、折れにくい金属バットを導入。一時は力の弱い打者でも振りやすいようにと軽量化されたこともあったが、鋭い打球が投手や野手を強襲。怪我のリスクを避けるため、日本高野連では2001年にバットの重さを900グラム以上と定めたが、高校でもウエートトレーニングは導入されると選手がパワーアップし、重いバットを軽々と振るようになった。すると再び、鋭い打球が直撃する危険性が高まりだした。

 さらに、木製バットよりも反発係数の高い金属バットは、もともと打球の飛距離が出やすいことに加え、より遠くへ飛ばす性能がアップ。ボールをバットの芯で捉えなくても打球は詰まることなく、ヒットやホームランとなる。そのため高校時代に“強打”で名を馳せた選手がプロ入り後、木製バットに対応できず伸び悩むという現象が続出。将来的に必要な打撃スキルを身につけるという意味では、実は弊害をもたらしていることも分かってきた。

 スキル向上に弊害をもたらしているのは、打撃だけではない。バットがボールをこすっただけでも安打になるケースは多々ある。すると、投手はバットでコンタクトされないような投球を目指し、直球勝負ではなく変化球でかわす投球を覚えるようになる。成長期にある中高生が、体にかかる負荷の大きい変化球を多投すれば、当然の結果として故障が多発してしまう。また、守備の面でも、球足が速く鋭い打球を待って捕球することに慣れ、木製バットによる打球を処理する際にボールに向かってチャージできず。アウトを取り損ね、無駄に投手の球数を増やしてしまうこともある。

 バットの性能は、投手の球数や球児の安全と意外に密接に関わっていることが分かるだろう。

低反発バットでも芯で捉えれば、打球は変わらぬ飛距離

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