“師”の言葉で引退を翻意 侍J女子代表に選出された只埜の“運命”を変えた誘い
アマクラブの東海NEXUSに所属、平日は働いている
愛知ディオーネを応援してくれたスポンサーやファンがいる土地柄とはいえ、ゼロからのチームづくり。昨年2月に1期生として飛び込んだ只埜は主将を任された。当時の選手は6人。実戦練習はできず、基礎練習に明け暮れた。関東や関西の情報がSNSを通じてリアルタイムで入ってくる中で「一プレーヤーとして遅れてしまうんじゃないかという焦りは多少なりともありました」と当時の心境を明かす。
それでも未来を信じて加入した思いはブレなかった。「私自身は基礎練習が好きなので苦にならなかったです。一からのチームなので、まずは基礎ができてからと思っていました」と先頭に立って、汗を流した。
昨季の公式戦出場は合同チームで臨んだ1試合だけだったが、今季は選手が12人になり、単独出場が可能になった。東海・中部地区のチームが所属する「センター・リーグ」の最初の大会、5月4日のセンター・トーナメントでいきなり優勝と絶好のスタートを切った。
選手たちは地元企業と雇用契約を結び、平日は働いている。只埜の勤務先は岐阜県各務原市にあるIHI機械システムの総務人事部。「まだ2年目なのでたくさん仕事を任されているわけではないですが、制服を着てOLをやっています。職場でスポーツ選手であることを意識するのは“重い荷物を持つのを手伝って”と頼まれる時ですね。デスクワークが多いですが、力仕事は得意です。野球が好きな方たちに少しずつ応援していただけるようにもなりました」。初めてのOL生活にも前向きに取り組む表情は、充実感でいっぱいだ。
新天地での生活が、只埜の心境に変化をもたらした。「プロの時に野球が楽しいと感じたことはなかったんです。生活がかかっていると、だんだん楽しい野球というのを忘れていってしまいます。今は勝手に楽しくなっている感じ。監督と代表がネクサスをつくってくれて、そこに惚れて応援したり、手伝ってくれる人たちがいる。この環境だから野球を楽しめているのかなと思います」と笑う。