アメフトに転身した元DeNA石川雄洋氏 一見クールな男が“初代主将”を任された理由
「これからは少しでも自分をわかってもらえるように…」
引退セレモニー中、石川氏が現主将の佐野恵太外野手にかけた言葉も「試合が終わってみんな疲れているのに、ごめんな」だった。
昨季主将に就任した佐野からは、何度も相談を持ち掛けられてきた。「佐野は昨年、規定打席数をクリアしたことがない中でキャプテンになって、4番も任されて、いきなり首位打者を取った。柔らかく見えて、芯を持っている。僕から言うことは何もない。このまま、ちょっと緩い雰囲気で頑張ってくれればいいんじゃないかと思います」とエールを送った。
佐野が「柔」のキャプテンなら、石川氏は自身をどんなタイプの主将と認識していたのだろうか。本人に聞いてみると、「後輩から見ると、取っ付きにくかったかもしれない。そういう雰囲気を出しているつもりはなくて、僕はウエルカムだったのだけれど、噛み合っていなかった」と苦笑した。時間さえかければ、誰もがそんな人柄を愛した。
「万人に好かれようとは思っていなかった。それが良くない所。これからは少しでも自分をわかってもらえるように頑張っていきたい。また一から友達を作らないといけないので」と付け加えた石川氏。
34歳での劇的な転身。アメフトでは俊足を生かし、パスを捕球する役割のワイドレシーバー(WR)を務める。当面は9月に始まる秋のリーグ戦出場が目標。「もちろんメンバーに入れるように頑張るけれど、ド素人がいきなり入れるものではない。一生懸命練習するしかない」と野球同様、地道に努力していく覚悟を決めている。新天地に幸多かれ、そして理解者に囲まれた第二の人生となることを祈りたい。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)