“ぶんぶん丸”から変貌した「世紀末覇者」 オリックス杉本裕太郎の覚醒の理由とは?

2020年と2021年シーズンにおける球種別打率【表:PLM】
2020年と2021年シーズンにおける球種別打率【表:PLM】

速い変化球への対応力に加え、速球そのものにも強くなりつつある

 続けて2020年と2021年における、球種別の打率も紹介したい。

 シュート、シンカー、ツーシームといった速い変化球には2年続けて好成績を残しており、概ね得意としていることがわかる。それに加えて、今季はストレートに対しても打率.333と、高い確率で安打にできるように。2年続けてある程度の打率を維持するカットボールも含め、速い球への対応力は総じて高いと考えられる。

 また、昨季は苦手としたカーブやスライダーに対しても、今季はそれぞれ一定以上の数字を記録。一方でフォークとチェンジアップの2球種は打率を落としているが、苦戦していた球種を克服しつつある点は、杉本選手の対応力や向上心の高さを示しているとも考えられる。また、2年続けて打率が極端に悪く、継続して課題となり続けている球種が1つも存在しないことは、それだけ弱点が少ないということにもなるだろう。

 ここからは大きな魅力でもある、豪快な本塁打について見ていきたい。まず、これまで1軍で記録した21本のホームランを、2020年までと2021年に分けたうえで、投球コース別の本数を見ていきたい。

 2020年以前、2021年ともに、3本以上の本塁打を記録したコースは存在せず、大きな偏りはないことがわかる。その中でも、2021年に入ってからは、ど真ん中や真ん中高めといったコースでそれぞれ複数のホームランを記録しており、甘い球をスタンドまで運べる確率はより向上していると考えられる。

 同様に、これまで本塁打を記録した球種と、本塁打の打球方向についても確認したい。

これまで本塁打を記録した球種と、本塁打の打球方向【表:PLM】
これまで本塁打を記録した球種と、本塁打の打球方向【表:PLM】

 2021年はそれまでに比べて、ストレートを本塁打にする数がかなり多くなっている。パ・リーグの投手には速球派が多いことを考えても、より環境に適合した進化を遂げていると言える。パの投手たちが力勝負を挑んできた際に、その速球を力強くはじき返せるようになったことは成績向上にも、直接敵に関わっていることだろう。

 打球方向に目を向けると、レフトへ引っ張って本塁打にする数の増加が目に付く。この点は杉本のパワーがより生きるようになったことの証明だが、2020年まではわずか1本だった右方向への本塁打が、今季は6月上旬の時点で既に3本記録されている点も見逃せない。

 ライトへ流して打った3本塁打は、いずれも速球を打って記録したもの。コースの面でもアウトコースが2つ、真ん中高めが1つと、先ほど紹介した今季の得意コースの傾向に合致するものだ。引っ張るだけでなく、流し打ちでも持ち前のパワーが打球に伝わるようになった点にも、杉本選手の打撃の進化が如実に表れている。

杉本選手の進化は、各種の対応力が向上したことの表れ

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY