育成期から肩肘の故障予防は不可欠… 中学硬式野球でも整備進む“球数制限”の実情
「中学生選手の障害予防のための指導者の責務」が示す基本的な心掛けとは
また、前回から引き続き、練習の中での全力投球についても「1日70球以内、週350球以内とする。また、週1日以上、全力による投球練習をしない日を設けること」と定めている。
改訂された統一ガイドラインは2021年度を周知期間とし、2022年度からすべての団体で完全適用が予定されている。ボーイズリーグは今年5月に上記を踏まえた独自のガイドラインを発表。レギュラーの部(3年生以下の大会)では日本中学硬式野球協議会のものと変わらないが、ジュニアの部(2年生以下の大会)では「1日最大70球、連続する2日間で105球。3連投の場合は1日35球以内」と、さらに少ない投球数を設定した。
2019年に独自の「投球限度」を定めたポニーリーグでは、中学3年生は1試合85球、2年生は75球、1年生は60球とし、同日の連投および投手捕手の兼任と3連投を禁止。1日50球以上投球を行った場合は、投手として休養日を1日挟まないといけないルールとなっている。統一ガイドラインの改定を受け、年内にも現場の声を聞きながら、具体的に来年度のルールを決めていくという。
日本中学硬式野球協議会の改訂統一ガイドラインには「中学生選手の障害予防のための指導者の責務」として6項目が明記されている。改訂前のものにも「指導者の義務」として5項目が記載されていたが、最後に1項目が付け加えられた。
1.複数の投手と捕手を育成すること
2.選手の投球時の肩や肘の痛み(自覚症状)と動き(フォーム)に注意を払うこと
3.選手の故障歴を把握し、肘や肩の痛み(自覚症状)がある選手には適切な治療を受けさせること。またウォームアップとクールダウンに対する選手自身の意識を高めること
4.選手の体力づくりに務めること
5.運動障害に対する指導者自身の知識を高めること
6.練習や試合・大会への参加・出場については健康チェックを十分行うこと。また、大会終了後には十分な休養をとること
指導者が持つべき基本的な心掛けではあるが、改めて明記しなければならないということはつまり、残念ながら実践できていない指導者がいるということだろう。統一ガイドラインでは投球数として具体的な数字が示されているが、実は上記の「指導者の責務」が果たせていれば自然と選手の健康は守られ、具体的な数値を定める必要はなくなるのかもしれない。これは中学野球に限ったことではなく、高校野球も然り。投球数制限の多少を議論する際には、それ以上に指導者の責務について議論してもよさそうだ。
(Full-Count編集部)
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