プロ注目の153キロ右腕が挑む最後の夏 “未踏”の聖地へ「圧倒できる試合を」
輿石監督「スタミナ面の心配もなくなりました」
その試合、風間は0-2の3回途中から3番手で登板した。9回まで安打を許さない投球で相手を寄せ付けなかった。4回には風間がソロ本塁打を放ち、5回に同点としたが、その後はホームが遠い。そして、無死一、二塁からはじまるタイブレークの延長13回。三振2つで2死としたが、右打者に甘く入ったスライダーを右前に運ばれた。二塁走者が生還し、2-3。短い秋だった。
冬場、チームは打力強化に着手。フリー打撃を3か所から5か所に増やし、時間も費やして打ち込んできた。春にはその成果が徐々に顔を出した。投手陣も風間だけに頼らない。遊撃を守る石田一斗(3年)も台頭し、右の山本隆世、左の栗城蓮らも控える。捕手の中井稜貴主将(3年)は「ピッチャーは球打だけじゃない。誰が投げても勝てるので、打撃陣が点を取っていきたい」と気合いを入れる。5番を打つ風間も「攻撃はみんなに任せたい」と信頼を置く。
秋の公式戦は地区大会2試合を含め、わずか3試合だったが、春は東北大会の中止、県大会の延期もありながら、最大8試合を負けずに戦い抜いた。輿石重弘監督は「強くなるためには、経験に勝るものはないと思っています。春に公式戦を8試合できたというのは大きい。また、その8試合を勝てたというのは大きな自信になる」と手応えを口にする。風間についても「スタミナ面の心配もなくなりましたし、いろんな変化球も投げられるようになった。スカウトの方がたくさん見にきている中でも安定した結果を出せるというのは大したもの」と目を細める。
ロッテ・山口航輝外野手が2年生で主力だった2017年、明桜は8年ぶりに聖地への扉を開いた。その年の4月に就任したのが輿石監督。メンタルトレーニングでチームに明るさをもたらし、1試合、1試合を決勝だと思って臨むことを意味する「一戦決勝」を合言葉につかんだ栄冠だった。その「一戦決勝」に加え、この夏は「圧倒して勝つ」の意識も植え付ける。「力は持っているので、期待しているよ、という意味です」と輿石監督。秋の県大会初戦敗退から春は県大会優勝と、チームは投打にたくましくなっている。
ブロックには実力校がひしめくが、どこが相手でも力を出し切ることに変わりはない。「夏も自分一人で戦うわけではありません。チーム全体で圧倒できるようにしていこう、とみんなで話しています」と風間。仲間とともに秋田、そして全国の頂点を目指すドラマを描いていく。
(高橋昌江 / Masae Takahashi)