「背中を押す言葉が大きかった」元阪神・葛城氏、報徳コーチ就任で伝えたい“仰木の教え”
オリックス入団2年目、仰木監督の言葉「その気持ちに応えたいと思った」
オリックス、阪神で活躍した葛城育郎氏が兵庫・報徳学園のコーチに就任し、悲願の甲子園出場を目指している。立命館大学の後輩でもある大角健二監督を支える“元プロ”は、恩師・仰木彬氏の言葉を胸に球児たちと向き合っている。
今年2月に学生野球資格を回復し、4月からコーチとして本格的に指導にあたっている。西宮市内で「酒美鶏・葛城」を経営しながら、多忙な合間を縫ってグラウンドではノック、打撃などで汗を流している。大学の後輩・大角監督から要請を受けたが「母校は倉敷商(岡山)。OBでもない自分が入ることは……」と戸惑いもあった。それでも「大角監督は本当に野球に熱心。その姿を何度も見ているので、力になれることがあるなら。色々な反応はあると思ったが断る理由はなかった」と、当時を振り返る。
甲子園をかけた県大会も始まり「高校生は短期間でも変わった姿を見せてくれる。監督を支えることができればいい」と笑顔を見せる。今年のチームは力のある選手が多い中、昨秋、そして春と思うような結果を残すことができなかった。春の試合を見ていた葛城氏は「個々の能力が高い選手が多かったが、どこか相手に合わす野球をしているように感じた。だからこそ夏の初戦は嬉しかった」と振り返る。
15日に行われた仁川学院戦では先発全員安打の26安打と打線が爆発し25-0で5回コールド勝ち。「練習試合でもこんなに点を取ったところは見たことなかった。技術的なところもそうですが、一発勝負の高校野球で大事なのはメンタル、気持ちの持ち方だと思いますね」。
1999年にドラフト2位でオリックスに入団。2年目の2001年にはレギュラーに定着し130試合に出場、打率.268、14本塁打53打点の成績を残した。様々なコーチから指導を受けたが、一番心に残っているのは仰木監督の言葉だ。スランプに陥り試合後に監督室に呼ばれ、「怒られる」「2軍落ち」も頭によぎったが面と向かって言われたのは「三振したらいいんや。使ってるのは俺やから気にせんとやれ」だった。
打撃フォーム、練習内容など細かいことも、もちろん大事だが「そこで『三振したらいいんや』とは思わないですよね。やっぱり、その気持ちに応えたいと思った。アドバイスよりも背中を押す言葉が大きかったですね」と、今でも当時の言葉が支えになっている。
現在、高校生たちにも自らの考えを強要することはない。聞かれれば惜しむことなく技術論なども答えるが「最終的に試合をやるのは本人たち。どうやって本番で普段通りの力を出せるか。その部分を上手く引き出してあげられれば」。3年ぶりの聖地を目指す名門に新たな風を吹き込んでいく。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)