手応えのなかった22本目のアーチ 花巻東の1年生・佐々木麟太郎が追い求める真髄

花巻東・佐々木麟太郎【写真:荒川祐史】
花巻東・佐々木麟太郎【写真:荒川祐史】

22本目のアーチに思い知らされた打撃技術と驚異的なスイングスピード

 焦らない、冷静だ。1球挟んで、カウントは3ボール1ストライク。5球目は、高めに浮いた92キロのスローボールだった。183センチ、115キロの体が反応する。振り抜かれた打球は岩手県営野球場の夏空に溶け、あっという間に右翼席に吸い込まれた。緩いボールをスタンドまで運ぶには、確かなミートポイントでの強いスイングが必要だ。大会2本目にして高校通算22本目のアーチは、佐々木の打撃技術と驚異的なスイングスピードを改めて思い知らされるものだった。

「本日の試合は厳しい戦いになると思っていたので、まずは何とか先制点を挙げたいと思う中で1本が出て、流れを持ってくることができてよかったです。(相手投手は)変化球中心でありながら、真っすぐとの緩急をうまく使っていました。その中で、まずはしっかりとボールを引きつけ、強い打球を意識しました。下半身の力を意識して、強く振り切ることを心がけました」

 手応えはなかった――。

 その言葉が、左打席に立つ1年生スラッガーの底知れぬ力をより際立たせるのだ。佐々木のソロアーチで先制した花巻東は、決勝進出を決めた。甲子園まで、あと1勝。

「ホームランとか、そういう記録を狙うのではなく、チームに貢献する強い打球を、チームに流れを引き寄せる打撃をしたい」

 自らのバッティングに徹してこそ、道は開ける――。佐々木はそう信じている。

(佐々木亨 / Toru Sasaki)

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