わずか1時間5分の準決勝 今秋ドラ1候補の市和歌山・小園健太が見せた春からの成長
準決勝・高野山戦は5回1安打8奪三振、決勝は智弁和歌山と対決
1時間5分。あっという間の準決勝。印象に残ったのは今秋ドラフト1位候補の圧倒的なピッチングだった。全国高校野球選手権和歌山大会は25日、準決勝2試合が行われ、第1試合で今秋ドラフト上位候補、最速152キロ右腕・小園健太投手(3年)擁する市和歌山が10-0の5回コールドで高野山を破り、決勝進出を決めた。
見ていて気持ちが良いほどリズムのいい投球だった。準々決勝に続いて先発のマウンドに上がった小園は初回先頭打者を見逃し三振、続く2番打者も空振り三振。二者連続三振でスタート。3番・玉村綸星捕手(3年)に右前打を許すも、この試合、最も警戒していた4番渡邉大和内野手(3年)からも「狙っていた」と145キロの直球で空振り三振を奪った。
エースとしてチームが勝つための投球だった。「泣いても、笑っても最後」の夏に大切にしているのは、「気持ちの持っていき方」だった。「これまでは、1試合トータルでどう抑えるか考えてしまっていて、目の前の1人のバッターにあまり執着心がなかったかもしれません」。しかし、この夏は違う。負けたら終わりの夏は「1つ1つ全力で」と、目の前の打者に集中した。実際、8つの三振を奪ったが「狙ったのは4番の渡邉君の2つだけ」。野手にも「打たせていくよ」と声をかけ、自身の成績にはこだわらなかった。
リードする松川虎生捕手(3年)も「(相手打線が)下位に対しても強い球が来ていますし、1人1人抑えてやろうという気持ちが伝わってくる」と、エースの変化を感じていた。
春は直球の球速にとにかくこだわった。それでも「ファウルにされて、変化球に頼らないといけなかった」と、質には課題が残っていた。その春と比較して、本人は「少しだけ成長しました」と笑みを浮かべながら、謙遜しつつ「空振りが奪えるようになったのと、春の全力(投球の球)ぐらいが、夏は8割(の力)で投げられている」と自身の成長もしっかり感じ取っていた。
この日の最速は147キロ。「コントロールが良かったので及第点はあげられると思います」と満足そうに微笑んだ。5回1安打8奪三振の完封。わずか62球の省エネ投球だった。決勝の相手は智弁和歌山に決まった。「決勝戦は決勝戦の気持ちの持っていき方があるので、全てをかけてやっていきたい」リベンジの舞台までマジック1が点灯した。
(市川いずみ / Izumi Ichikawa)
市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。