初の甲子園決定も自然と即整列 71歳名将が鹿島学園に浸透させた“人間力”
常総学院を相手に完投したエース薮野は「内面的に成長したと思う」
鹿島学園のエース薮野哲也投手(3年)が三振に仕留めて春夏通じて初の甲子園出場を決めると、鈴木博識監督は目に涙を浮かべた。26日に行われた全国高校野球選手権茨城大会決勝。鹿島学園が常総学院に3-2で競り勝ち、春夏通じて初の甲子園出場を決めた。1996年から2009年まで日大を率いて元巨人・村田修一(現巨人野手総合コーチ)や広島・長野久義外野手らを指導した鈴木氏は2015年夏大会後に鹿島学園の監督に就任。悲願の甲子園初出場の裏には、71歳の指揮官による人間形成があった。
「本当によくついてきてくれたなと。選抜を逃していますから、そのことを反芻して夏を戦いました」。昨年秋、常総学院との茨城県大会決勝を4-3で制して秋季関東大会に出場も、1回戦で専大松戸(千葉)に0-8で完敗。選抜高校野球大会出場のチャンスを逸した。その悔しさ忘れずに練習を積んだが、今春の県大会は2回戦で石岡一に0-1で敗退。また、1からチームを鍛え直した。
「春はなかなか練習試合が組めなくて、思うように結果が出なかった。ただ、石岡一に負けてから選手が目の色を変えて野球に取り組むようになった。特に薮野は顔つきが変わったというかね。内面的に成長したと思う」。その言葉通り、この日の薮野は直球と3種類のスライダーを駆使し、常総学院打線を8回まで2安打無失点に封じた。9回に2点を奪われ1点差となったが動じることはなった。「慌てずにテンポをゆっくり投げた」と、打たせて取る投球で27のアウトのうち14をゴロで奪った。
就任6年目にして鹿島学園を甲子園に導いた鈴木監督だが、野球に関しては「細かい指導はしてこなかった」と話す。主に力を入れたのが人間形成。ベンチ内に掛けてあるユニホームには鹿島学園の5つの部訓「いかなる場面でも冷静な判断力」「何事も準備を怠らない」「強い相手ほど向かっていく闘志」「ここ一番で発揮できる力」「この試合が最後だ悔いを残すな」の文字が書かれている。
「元々は3則だったのですが、『ここ一番で発揮できる力』『この試合が最後だ悔いを残すな』を加えました。高校野球は最後は負けで終わるので。負け方が大事だという部分と両親への恩を忘れるなという意味です。私は『良い子でいなさいとは言わないから、柵だけは越えるな』と指導してきた。悪いこと、ルールを破るようなことはしてはいけない。そういう面では、就任当時に比べて選手は成長したと思います」