いよいよ聖地でベールを脱ぐ157km右腕 スカウトの予測を超えて急成長した明桜・風間
風間「1つでも多く勝って、みんなと長く野球をやれるようにしたい」
投球だけでなく、スカウトがこぞって褒めるのは風間の全力疾走だ。「見ていて、気持ちがいいよね」「走る姿がいい。バネを感じる」「打っても走っても、プレーの様がいい」――。足は特別速いわけではないが、トップスピードに乗るのが早い。打席から一塁に向かう時、走者になった時、誰かと競争しているかのようにダッシュする。
春の地区予選でライトを守っていた時は、バックネットにぶつかったり、一塁、三塁スタンドに入ったりする明らかなファウルでも機敏に反応。打球方向に数メートルもダッシュしていて感心したのだが、申告敬遠された時はさらに驚いた。一塁へ、タッタッタッタッと向かう打者が多いと思うが、風間はバットを地面に置いたと思ったら一歩目から腿を高く上げて猛然とダッシュしたのだ。それも、口角を上げて。学校の休み時間にふざけて友達を追いかける子どものように。
球速や球質、投球だけでなく、見ている者を飽きさせない要素をふんだんに持っている風間。球速が注目されがちだが、変化球にもこだわりを持って磨いてきた。秋田大会で1球だけ計測した「157キロ」のインパクトは強いが、そこに捉われない奥深い魅力がある。1年夏は秋田大会決勝で敗れ、同秋は東北大会2回戦敗退。昨夏は甲子園が中止になり、独自大会で優勝したものの、聖地のマウンドを踏むことはできなかった。昨秋は県大会初戦で敗れており、高校野球でやっとたどり着いた舞台だ。
明桜は大会3日目の第1試合で帯広農と対戦する。いよいよ、風間が全国でベールを脱ぐ。「悔いのない高校生の野球をしたい。甲子園も負けに行くわけじゃないので。1つでも多く勝って、みんなと長く野球をやれるようにしたい」。3年生のシーズン目標をそう語っていた。居心地のいい仲間と1日でも長く野球をして、「なんだ、心配なかったじゃない」と、思わず微笑んでしまうパフォーマンスを期待せずにはいられない。
(高橋昌江 / Masae Takahashi)