初出場で初戦突破、東北学院を支える学生コーチ 渡辺監督「うちは彼らでもっている」

千葉俊輔・学生コーチ「この選択をしたことに後悔はありません」

 千葉はマウンド付近で歓喜の輪を作る仲間のもとに走っていく直井を見送り、渡辺監督、幡手新一郎部長と握手した。「監督さんはその時から泣いていたので、学生コーチをやってきてよかったなと思いました」と安堵。「この選択をしたことに後悔はありません。良偉人がいて、監督や先生がいて、このメンバーで、このグラウンドでやれたから優勝できたと思います」と胸を張った。

 昨秋は県大会準々決勝で古川学園にサヨナラ負け。それも、3-1の9回に適時打と失策で一気に3点を失っての敗戦だった。「選抜に行ける力を思っていると思っていた」と直井。ショックはあったが、オフシーズンでチーム力を高めてきた。春の県大会では準決勝で仙台育英に4-5のサヨナラ負けを喫したが、夏を見据えた選手起用だったため、その敗戦を夏への糧とした。直井は言う。

「甲子園に行けない、と思ったことはありませんが、不安になったことは確かにありました。それでも、夏に甲子園に行けるという未来は見えていたので信じてやってきました。誰かが打てなかったり、誰かがミスをしたりしてもカバーできる力がこのチームにはある。だから、チームとして成り立っていると思うんです」

 宮城県で唯一の男子校。来年から共学になるため、スタンドには春も夏もサッカー部から借りた手作りの「男子校魂」の横断幕を張り、「男子校最後の年に甲子園」を強く意識して悲願を達成した。宮城を初制覇した直後、渡辺監督は「生意気に思われるかもしれませんし、力は大したことはないかもしれないですが、存分に甲子園をホームグラウンドのように味わって、満喫して、その上で宮城県の代表として恥ずかしくない戦いをできればと思います」と言った。

 その言葉通りの戦いぶりを見せ、「甲子園で1勝」の目標をクリアした。学校が大きく変わるタイミングで甲子園にインパクトを与えた東北学院。そこには直井と千葉、2人の学生コーチの信じる力と奮闘があった。

(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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