子どもが「ピンとこなくてもいい」 古田敦也氏が考える少年野球と指導者の向き合い方

指導者も、子どもたちも、上手くなるアイデアやヒントをもらう程度の気持ちで

 一方、野球を始めたばかりの年代にも、より野球への興味を持ってもらえるようにしたい。古田氏は制作サイドと時間をかけて、方針、コンテンツの内容を決めているが、現時点では「難しい話くらいがちょうどいいかもしれない」と感じている。ただ、子どもたちに間違って受け取られても困る。「補足を入れたりしながら、伝えていけたらと思っています」と話す。

 今、少年野球の世界では様々な問題が生じている。ひと昔前の指導が、現代の子どもたちに合わないという声が聞こえる。そこに大人からの押しつけや、怒声・罵声が加われば、野球を続ける子が減ってしまう。昔ながらの指導を抜本的に変えるべきなのか、「俺の時代は?」のセリフは時代遅れなのか。それとも他にも着地点はあるのではないか……。そんな疑問を古田氏にぶつけてみた。

「指導者が言う『私の方針』というのは、時代によって違うかもしれません。ただ、一概にダメだとは思わないんですけどね……。色々な人が様々なことを言うけれど、実は本質をたどっていくと、1つのところに集約されている場合もある。表現方法が違うだけかもしれない。アプローチの方法が違っているだけで同じことを言っているケースや、人によって違う感覚を持っていることもありますから」

 選手に適切なことを言っていても、言葉の強弱、選び方ひとつで、受け手がマイナスにとらえてしまうこともある。古田氏は、指導する側も、受ける側も、「野球が上手になるアイデア、ヒントになるかもしれない」という程度で、話を聞けばいいのではないかと考える。

「選択肢が増えるだけでもいいと思います。子どもたちはもしも迷ったら、『斉藤和巳投手はこんなことをやってたなぁ……。でも、なんとなくピンとこない。だったら、五十嵐亮太投手がこんなことやっていたから、やってみようかな』という感じで。ピンとこなくてもいい。その中で自分に合ったものを選んでいけるようになるといいと思うんです」

 指導者の言うことは絶対に聞かなくてはいけない――。そういう心理にならないようにすることが、可能性を広げ、上達の近道になるのではないだろうか。

「指導者から与えられたアイデアでも、こういう(フルタの方程式のような)チャンネルでも(上達への)選択肢が増えるといいですね。反対に迷わせてしまうということも出てきてしまうかもしれませんが(選択肢が)ないよりは、絶対に良い。自分に合うものを見つけていってくれればいいですし、後々、前に違う人から聞いて受け入れられなかったことが、本質的に同じ部分、重なる部分があったと気づくことだって良いと思います」

 チャンネル内の動画には明日から早速試したくなる一流の細やかな技術、トレーニングが披露されている。これが4か月足らずで登録者数20万人を突破した同チャンネルの魅力でもある。球界に名を残した選手たちが語り合った野球理論は「教材」、上手になるための「選択肢」となって映像に残されていく。

【動画】見てみたかったバッテリーが実現 古田敦也氏のキャッチングに感動する斉藤和巳さん

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