飛躍につながったカッターが諸刃の剣となった皮肉 菊池雄星、復調への糸口
アストロズ相手に7回無失点「久しぶりに、投げた! という感じですね」
マリナーズの菊池雄星投手が8月31日(日本時間9月1日)、本拠地シアトルでのアストロズ戦に先発。メジャー屈指の強力打線を相手に7回を投げ、4安打無失点2四球4奪三振の好投を見せた。0-0の同点で2番手にマウンドを譲り勝敗は付かなかったが、試合後のオンライン会見で「久しぶりに、投げた! という感じですね」と振り返り、苦しんだ8月を直球主体の納得の投球で締めくくった。
明るい表情から、思わず、笑いが漏れた。
「やっと、久しぶりに息ができるかなという感じですね」
7月半ば過ぎの後半戦以降、続いていた不調は如実に数字に表れた。4月から6月までの被打率.154に対し、7月からこの日の登板前までの被打率は.291。空振り奪取率も40.6%から30.8%へと落ち込んでいた。ここ1か月は、フォームの微調整を繰り返しながらも、結果には結び付かず、不安を募らせていた。しかし、3日前のブルペンで「これかなっていうものが掴めた」と好感触を得てこの日を迎えた。
「これかな。こんな感じというものが出たかなぁという気はします」
見直したのは足元だった――。
「いろんなことをやりながらで、ステップの位置を変えました。一足か、もしかしたら二足分くらいインステップになっていたのを、真っすぐに真っすぐにという意識で修正しました。とくにカットボールを投げるとインステップになりがちなので、練習ではあまりカットボールを投げないようにしました」
皮肉にも、今季の飛躍につながったカッターの多投が諸刃の剣となって不調を招いていたのである。バットの芯を外すカッターは、曲げようという意識が強くなると体の開きが生じてくるという難点がある。そこを意識すれば、つま先が一塁方向へ入り、壁を作って体の開きを抑えようとする“インステップ”気味になる。ウッドワード投手コーチや再渡米し8月10日から再びチームに合流した岩隈久志特任コーチ補佐の助言を元に、登板間の調整ではカットボールを控え、軸足のかかとのライン上に、踏み出した足が着地するように意識した。シーズン当初から口にする、バランスとタイミングをステップの修正で取り戻した。