150キロでも「打たれたら何も残らない」 元ロッテ成瀬が抱く危機感と“技巧派”への転機
「まずは狙った所に5割の力でいいから投げられるようにする」
成瀬は現在、栃木で現役を続けながらコーチとしてNPBを目指す若手に指導を続ける。ルートインBCリーグにも150キロ超の速球を投げる投手はいるが、それだけで打者を抑えられるわけではない。球速だけを追い求める若手に危機感を覚えている。
「BCリーグでも甘く入ったら打たれるんですよ。150キロを何となくストライクゾーンに投げる。それで打たれたら何も残りませんから。だったら7、8割でいいからコーナーにきっちり投げられないのかなって思います」。
将来、NPBを目指す野球少年にも伝えたいことがある。理想は160キロの速球を内角、外角にきっちりと投げ分けることだろうが、それは相当高い技術が求められる。
「できないならまずは正しいと思ったフォームでボールを投げて、狙ったところに5割の力でいいから投げられるようにする。その後、7割、8割って徐々に力を上げていく。できるようになれば、試合中、困った時に狙ったところへ投げることができますから」
10月に36歳になるが今でも球速は140キロに迫る。速い球を投げたいという子どもの時からの気持ちは今も忘れてはいない。そんな思いがピッチングを研究する原動力にもなっている。スピードを求めることも大切だが、打たれてしまったら意味がない。怪我を防ぐフォーム作り、コントロール。それが伴ってこそのスピードボールであることを子どもたちは忘れないでほしい。
◯プロフィール
成瀬善久(なるせ・よしひさ)1985年10月13日、栃木県小山市出身。横浜高(神奈川)から2003年ドラフト6巡目でロッテに入団。2007年には16勝1敗、防御率1.81とで最優秀防御率、最優秀投手賞(勝率第1位)のタイトルを獲得。2008年には北京五輪日本代表にも選出された。その後は、ヤクルト、オリックスと渡り歩き、NPB通算96勝78敗、防御率3.43。2020年より独立リーグ・ルートインBCリーグの「栃木ゴールデンブレーブス」に投手兼任コーチとして所属。野球解説やメディア出演、野球教室などを行い、普及活動にも携わっている。