野球が「つまらない」を変えたい “硬いグラブ”はもう昔…「すぐに使えます」

子どもたちが求めるのは実戦ですぐに使える「捕れるグラブ」

 かつて新品グラブは硬いのが当たり前だった。捕球できないのを使い始めたばかりのグラブのせいにしながらも、柔らかくするために練習量を増やしたり、自分なりに型を付けたりした。少しずつ手になじんでいき、喜びや愛着を覚えた人も多いだろう。

 ところが今、人気なのは最初から柔らかいグラブ。背景にあるのは、子どもたちの考え方の変化だ。安河内さんは「子どもは握る力がないので、ある程度しっかりグラブが曲がらないとボールを捕れない。捕れないとつまらないので、野球をやりたくないとなってしまう」と説明する。「自分でグラブを育てる」という感覚は、子どもたちから薄まりつつある。ミズノの売り場でも、はじめから柔らかいグラブの需要が高まり、定番になっているという。

 これまでも野球を始めたばかりの子に「硬いグラブは使いにくい」との声があり、専門のスタッフが柔らかくしてから渡していた。子どもたちは、すぐに実戦で使える「捕れるグラブ」を求めているのだ。決して安くはないグラブを買ったのに「捕れないから使わない」と子どもに言われてしまうのは、親としても不本意だろう。

 メーカー側も減少する野球人口を考えれば、子どもの要望に応えるのは自然と言える。インターネットの普及などにより、習い事やスポーツが多様化。少子化で絶対的な子どもの数が減っていることに加えて、野球を選ぶ子どもたちは減り続けている。せっかく野球を始めようとグラブを手にした子どもたちに少しでも野球を楽しんでほしいという想いで商品開発を行っている。

「即戦力グラブ」はボックスシルエットと言われるオーソドックスな形をしている。柔らかさはあるが、形状は他のグラブと同じようにしっかりとしているので、すぐへたらないのも特徴だ。使っていくうちに、その子に合ったグラブになっていく。最初は柔らかくて使いやすいグラブでボールを捕る楽しみ、野球のおもしろさを知り、その後に本格的なものへ移行する。昔と今、正しいのはどちらかという議論は必要ないだろう。グラブ選びの常識や価値観が変化しているだけで、グラブにボールが収まった時の感触や喜びは変わらない。

(First-Pitch編集部)

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