ドラフト候補の154キロ右腕が挑む最後の秋 亡き祖母の言葉「プロに行ってね」を胸に
最速154キロに伸ばしても「悔しさすら出ない」モヤモヤ続きの春
3年春にはマウンドに戻れる予定だったが、新型コロナウイルスが発生。寮が閉鎖され、故郷の山口県に帰った。その間、高川学園中学・高校の1学年先輩で、昨年のドラフトでヤクルトから2位指名を受けた山野太一投手と練習。秋のリーグ戦で約1年半ぶりの復帰を果たした。
今春は先発に挑戦した。リーグ戦では登板した6試合中、4試合に先発。25回2/3を投げ、40三振を奪ったが、被安打22で9失点(自責5)。「満足いくピッチングが1回もできなかった」と投球内容に納得できなかった。
「1試合ごとに経験を積むのではなく、その試合を凌いで、次の試合を投げて、ただ時間が流れていった感じ。よくて50、60点。仙台大戦はゼロ点ですね」
リーグ優勝をかけた最終節の仙台大1回戦は先発したが、2本塁打を浴びて5回途中6失点(自責4)。攻撃も噛み合わず、1-6で落とした。2回戦は4番手で投げ、味方のエラーで1点を失ったが、7-3で勝利。通算9勝1敗の同率で並び、行われた優勝決定戦は4-1の9回に3試合連続のマウンドに向かったが、2ランを浴びて1点差に迫られてしまう。ここで気持ちを切り替え、変化球と150キロ直球で空振り三振を奪って胴上げ投手となり、仲間と喜びを分かち合ったが、モヤモヤは晴れなかった。
大学選手権1回戦の共栄大戦では4点ビハインドの8回から登板すると、自己最速を更新する154キロを2球計測した。だが、知ったのは敗れた試合後のインタビューの時。この試合もスクイズで1点を失うなど、不甲斐ない投球が続いた春。「選手権で負けても、悔しさすら出なかった」と苦笑する。
春を終え、すべての変化球の握りを見直した。特にスライダーは昨秋、斜めに変化していたが、この春は横に曲がったことで通用しなかったと分析する。投球時の左足の着地と腰の回転など、バランスが崩れたことで肘が下がったことも要因で、そういった投球フォームの微妙なズレも丹念に修正。夏場の練習で光が差し込んだ。