花巻東→日本ハムの8年間、大谷翔平がつけた“日誌”の存在 目標達成への必携ツール

原田教育研究所を主宰する原田隆史氏【写真:荒川祐史】
原田教育研究所を主宰する原田隆史氏【写真:荒川祐史】

「今日の練習で何をするか、先に決めてから1日を動くんです」

 マンダラの前段階となる目標達成シートは簡単に書けるものではない。目指す姿を考えていなければ、マスを埋めることもままならない。ただ大谷は寮で暮らした5年間、本村氏のもとにシートをよくもらいに来たという。言われなければ書けない選手もいる中で、自らアップデートを続けていくのは突出した行動だった。

 そして、記入した用紙を縮小コピーし、自身のロッカーに貼り付けていたという。「彼は日々、自分で書いた目標を見ながら練習していたんですよ」。なりたい自分と、そのためにしなければならないことを常に、頭へ入れていたのだ。

 そして、立てた目標を現実化するためのツールが日誌だ。その意味は予定管理ではなく、イメージトレーニングとセルフリフレクト=振り返りにある。「優秀なスポーツ選手は、今日の練習で何をするか、先に決めてから1日を動くんです。これはビジネスでも一緒ですよ」。一方でやらされる練習では、行ってから「これをやれ」と言われ、いやいや、サボりながらやることになる。どちらがより多くのものを得られるかは自明だ。

「大谷翔平はその日の練習に来るときには、その日の練習のポイント2つと、そのポイントで結果を出すための準備行動5つを作って練習に来ています。花巻東高時代からトレーニングされていますからね」

 練習が終わってからは振り返りだ。まず実際にできたかどうか。次にその日の1番良かったことを考え、記入する。これは能力に対しての自信や「やれる、できる」という思い、つまり“自己効力感”を伸ばすことにつながる。

 またその日、誰かに「ありがとう」と、感謝の言葉ををもらったら、それを生み出した自分の行動を記入していく。すると“自己肯定感”が高まる。

「言い換えれば、自己肯定感は自分大好き。日本人が一番弱いと言われている部分です。それぞれを書いていって、自分で自分の自信を高めていくのを自己認識法、一般的には自画自賛と言われていますけど、これがジュニアの育成にはとくに重要かなと思います」。自己肯定感の高い選手は、失敗しても打たれ強く、立ち直りが早い。大谷がプロ野球で“二刀流”という新たなチャレンジをやり遂げるには、必要不可欠な要素だった。

イメージと振り返りの繰り返しで、目標にどんどん近づける

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