内々定取り消しで一念発起 2度の“軟式転向”異色の韋駄天が待ち望むドラフト指名

全国大会出場の華麗な経歴も…2度の軟式転向決断

 謙虚な言葉とは裏腹に、経歴は華麗だ。北広島大曲東小6年時に北広島イーストグローリーで全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント、北広島大曲中3年時に札幌豊平ボーイズでジャイアンツカップに出場。北海高時代は2年夏の甲子園に「9番・中堅」で準優勝に貢献し、3年夏も甲子園に出場した。北海学園大でも主将を任された今春、30年ぶりの全日本大学選手権へ。小学生から全ての年代で中心選手として全国大会出場を果たした。

 プロを目指さない方が不思議に思える実績だが、鈴木自身は高望みをせず、堅実な人生を歩んできた。実際、過去に2度軟式野球への道を選択した。高校3年の時には「野球を続けられるなら、硬式でも軟式でもこだわりがなかったので」と軟式野球関係者から誘いを受けて公務員試験を受験。不合格だったため、北海学園大に進学した。

 大学卒業後も、関東の企業に就職して軟式野球に転向する予定だった。今春、コロナ禍の影響で内々定が取り消され、人生設計が大きく変わった。「すんなりいかないものですね。でも、それがあって、今こうしてチャンスをいただけているので」と運命のめぐり合わせを楽しむように笑った鈴木。高校生の時に公務員試験に受かっていたら、プロとは無縁の人生になっていた。

 今年3月に就職が白紙に戻ったことで、社会人野球やプロ野球に目を向けた。「上でやりたいけど、そんなレベルじゃない」と慎重だった鈴木に対し、島崎圭介監督が関東の強豪社会人チームへの練習参加を勧めてくれた。鈴木は「最初はやっぱりレベルが高くて、自分では無理だと思いました。でも、冷静に考えると足と守備は通用する部分があるんじゃないかと思いました」と前向きに考えるようになった。

 島崎監督は昨秋のオープン戦で鈴木が一塁から一気にホームインした走塁を見て、上のレベルで通用すると確信した。「えっ? もう還ってきたの? と驚くほどのスピードでした。自分のところの選手ながら、すごいなと思いました」と突出した能力に改めて気づいた。直後の練習で一塁到達、二塁到達などタイムを実際に計測してみると、手動ながら次々に球界トップクラスの数字を弾き出し、プロのスカウトも注目し始めた。

スペシャリストとして「生きる道ある。挑戦してみよう」

RECOMMEND

CATEGORY