甲子園での決勝は「やっぱり羨ましい…」 2016年全国高校女子V腕が語る聖地への思い

女子プロ野球リーグに4年在籍、今年から徳島県阿南市の野球のまち推進課に勤務

 今回優勝投手になった島野愛友利投手(3年)は中学時代にジャイアンツカップで日本一になって注目されたが、龍田さんも負けないほどの実績を持つ。徳島・鷲敷中では軟式野球部唯一の女子選手として活躍し、2年時に新人戦の県大会で完全試合を成し遂げた。冬季間には、野球部の監督だった父・雅和さんの勧めで陸上競技のジャベリックスローに挑戦し、3年生時にJOCジュニアオリンピックで優勝した。当時記録した52メートル42は、今でも歴代10位に入る好記録だ。

 やり投げへの導入競技として開発されたジャベリックスローは重さ300グラム、長さ70センチのターボジャブを投げて距離を競う。「これで日本一を目指そうと父が見つけてきたんです。ピッチャーに必要な動きとか、野球と連動する部分もあったので、やってみようと思いました」と経緯を語る。

 高校進学の際には、やり投げ選手として受けた勧誘を断り、女子硬式野球部1期生として神戸弘陵に進んだ。「野球を続けるには県外に行かないといけない。迷った末に県内でのソフトボールに切り替えようと決めかけた時に石原監督が鷲敷まで3回も来てくださって。この時に女子のプロ野球があると知り、それなら行ってみようと思うようになりました」。石原康司監督の熱心な誘いがなければ、ソフトボールに転向していた。人生を左右する運命的な出会いに導かれた。

 高校入学時に立てた全国制覇と女子プロ入りという2つの目標を達成し、女子プロ野球リーグに4年間在籍した。3年目の2019年に10勝6敗と2桁勝利を挙げる活躍したが、2020年は5勝止まりで引退を決めた。「チームに貢献できず、楽しくないって思った時期がありました。そう感じた時点で終わりかなって。気持ちが全然乗らず、次の年に頑張ろうという気持ちが湧いてこなくて。自信を失ったことと、肘の怪我も重なりました。野球を嫌いになってやめるのは嫌だったので、ここで1回選手として区切りをつけようと思いました」と振り返る。

 22歳の龍田さんが選んだ新たな道は、女子野球のクラブチームでプレーすることではなく、地元で女子野球の普及振興に携わること。今年4月から徳島県阿南市の職員として野球のまち推進課に勤務し、子どもたちにティーボールを教えながら、立ち上げたばかりの女子中学生チームの監督を務めることになった。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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