「どうせすぐ体がぶっ壊れると…」 7年の肩痛、元鷹左腕が過ごした“奇跡の1年”

肩痛に悩まされた現役生活も最後の1年で「全てが報われました」と語る坂田将人【写真:荒川祐史】
肩痛に悩まされた現役生活も最後の1年で「全てが報われました」と語る坂田将人【写真:荒川祐史】

周囲に支えられたプロ人生「僕よりも僕のことを諦めていない人たち」

 球団から契約更新の話もあった。もしかしたら肩は耐えられるかもしれないが、球威に限界を感じているのも事実。そして何より、湧き立つ思いがある。「これだけ腕を振って投げられた。まだやりたいという気持ちよりも、達成感の方が大きかったです」。引退の決断に、晴れやかな笑みが浮かぶ。

 11年間のプロ生活は、自分ひとりだったらとっくにリタイアしていた。家族やチームメート、治療してくれた専門家、そしてファン。「僕よりも僕のことを諦めていない人たちのことを見ていると、諦めるわけにはいきませんでした」。時間はかかったが、ようやく果たせた恩返し。「僕が投げているということに、みんなは驚いたと思います」と頭をかいた。

 もう、朝起きて左肩を回して確かめる必要もない。安堵が占める心の中に、少しだけ寂しさもある。言うことを聞かない肩と付き合ってきた日々。なぜ辞めなかったのかと問われれば、少しだけ思いを巡らせて言う。「野球が好きだから」。何物にも代え難いマウンドでの高揚感を、最後に堪能できた。「全てが報われました」。心置きなく、第2の人生に向かっていく。

(北原野乃 / Nono Kitahara)

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