戦力外通告に「落ち込みゼロでした」 悲観する暇すらもったいない“育成根性”
「もう待てない」コーチに先発転向を志願→支配下勝ち取る
自らの右腕で未来を切り開いてきた実績も、背中を押す。2015年の育成ドラフト3位で、ルートインBCリーグの武蔵ヒートベアーズ(現・埼玉武蔵ヒートベアーズ)から中日に入団。リリーフとして2軍戦で結果を残しても支配下の声はかからず、「もう待てない。インパクト残さないとダメ」と投手コーチに先発を直訴した。与えられたチャンスに完封などで応え、1年目のオフに2桁背番号を勝ち取った。
「育成からのスタートだったので、1年勝負だと思って変わらずやってきました。先を見据えてやっていないので、戦力外になったからといって気持ちに変化はないですね」。支配下となった2017年は35試合登板で11ホールドを挙げるも、翌2018年は4試合登板どまり。2019年は29試合登板で再び1軍で存在感を示したが、2020年は疲労骨折で出遅れ、4試合に終わった。山あり谷ありの6年間。戦力外もひとつの谷でしかなく、ただ登ることしか考えない。
通告翌日に挨拶回りを済ませ、翌々日から練習を再開。12月8日に開催される「プロ野球12球団合同トライアウト」に照準を合わせている。「目標は明確なので。生きるか死ぬか。他球団から声が掛からなかったら、引退するつもりです」。立ち止まっている暇すらもったいない。しぶとく、泥臭く、新天地を掴み取る。
(小西亮 / Ryo Konishi)