元ロッテ守護神・小林雅英氏が分析するパCS 「独特な雰囲気でどういう投球をするか」
優勝王手で迎えた2005年プレーオフ第3戦は「変な緊張感に…」
小林氏自身、現役時代の短期決戦には強烈な思い出がある。2005年、ロッテの守護神として29セーブを挙げてタイトルを獲得し、レギュラーシーズン2位でCSの前身である「パ・リーグプレーオフ」に進出した。第1ステージで3位・西武を撃破し、首位通過のソフトバンクが待つ第2ステージ(3戦先勝)へ。当時のプレーオフには、1勝のアドバンテージがなく、しかも第2ステージを制したチームが「パ・リーグ優勝」を称することになっていた。
第1、第2戦を連勝し早々と“王手”をかけたロッテは、第3戦も4-0とリードを奪って9回に小林氏が登場。優勝決定は間違いなしに見えたが、小林氏はまさかの4失点。延長10回に別の投手が打たれサヨナラ負けを喫した。
レギュラーシーズンであれば、セーブの付かない4点リードの場面でクローザーが登板することはほとんどない。小林氏は「4点差があったことで集中し切れず、変な緊張感に包まれていました。僕はシーズン中の登板に関しては相手打者、配球、結果の全てを記憶していて、シーズンが終わればリセットしていましたが、あの試合だけは記憶が所々飛んでいました。集中できていなかった証拠だと思います」と振り返る。
ロッテは第4戦も敗れ、2勝2敗のタイに持ち込まれたが、最終第5戦では3-2とリードして9回を迎え小林氏が登場。先頭打者の出塁を許したものの後続を断ち、ロッテは「僕が生まれた1974年以来の」31年ぶりの優勝を飾った。そのまま日本シリーズでも阪神を破っている。
「第5戦はプロ生活で最も印象深い登板です。第3戦で“やらかした”僕に、ああいう場をつくってくれたチームメート、任せてくれた首脳陣に感謝の気持ちでいっぱいでした。あの登板がなかったら、その後の僕の野球人生は変わっていたかもしれない」と語る。
小林氏も戸惑ったように、短期決戦ならではの雰囲気、起用法にどう対応するかが、選手個々にとって重要になる。「短期決戦では選手1人1人の熱量、出力が全然違う。ならではの表情、ガッツポーズを僕は楽しみにしているし、ファンの皆さんにも楽しんでほしいです」と小林氏。CSの存在意義について賛否両論があるが、「1年間を大きな遊園地ととらえ、レギュラーシーズンというアトラクションが終わり、また別のアトラクションが始まるのだと、選手にもファンの皆さんにも考えてほしい」と強調した。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)