「ちょっといいですか？」　日大三島、初V記念写真で全員がフレームに収まった訳

明治神宮大会に向け「日大三島の新たな伝統となる土台を作りたい」

　日大三島（静岡1位）が7日、東海大会決勝で聖隷クリストファー（静岡2位）を6-3で下し、初優勝を飾った。就任から1年半で野球部の歴史を塗り替えた永田裕治監督。報徳学園時代から信条とする“全員野球”を新天地でも貫き通した。

　東海大会を制した直後はまだ現実を受け止められない様子だった。「新チーム（結成）の時を考えれば県大会、東海大会など想定してなかった。子どもたちの成長は凄い。指導者生活の中でこれだけ成長した姿は見たことがなかった」と目を細めた。

　就任当初は選手たちの控えめな性格に悩んだ。練習でミスを連発し「もう帰ってもいいぞ！」と喝を入れて反応を待ったが、「監督もそう仰ってるので今日はこのあたりで……」とまさかの返答。報徳時代はギラついた目で向かってきた選手たちを見てきただけに「そこはもう一丁って言葉を待ってたけど、ズッコケそうになった」と笑う。

　指揮官が誰よりも声を出し、背中でチームを引っ張った。ユニホームが泥だけになることもあったが「ゼロからのチーム作りですから。58歳のおっさんでもこんなにできるんだと見せたかった」。少しずつ野球に対する意識改革が浸透し、試合で勝利を重ねるごとに自信も深めていった。

　主力だけでなくメンバー外も同じ練習を行うのが永田野球。公式戦期間中でも全選手が同じグラウンドで汗を流し、分け隔てなく言葉を投げかける。早急にチーム力を上げるには主力中心の練習が近道だが「最後まで貫き通す自分の糧になっている全員野球。絶対に変わらない。たかが野球。野球が上手なだけで特別扱いはしたくない」と変わらぬ信念で指導を続けた。

　その思いが垣間見られた瞬間があった。7日の試合後、東海大会初優勝を決め報道陣から記念写真を求められた。最初は背番号を付けたメンバー、ベンチ入りしたマネジャーだけでの撮影となったが、数枚撮り終わると指揮官は「ちょっと全員入れて撮ってもらっていいですか？」とリクエスト。スタンドで応援していたメンバー外の選手たちも呼び寄せ、全員がフレームに収まり満面の笑みをこぼしていた。

　20日からは秋の日本一を決める明治神宮大会に出場する。報徳時代は2001年、2006年に2度出場し優勝、準優勝の成績を残しているが「あの時とはチーム力が全然違う。だが、土台を作りたい。日大三島の新たな伝統となる土台を。それには格好の舞台かもしれません」と心待ちにしている様子。発展途上のチームが来春の選抜までどれだけ成長を見せるのか、そして甲子園に戻ってくる名将のタクトにも注目したい。