ヤクルトはなぜ大激戦に勝てた? 専門家が指摘する両軍の明暗を分けたポイントは
「接戦において、エラーと余計な四球は致命傷になる」
■ヤクルト 5ー4 オリックス(日本シリーズ・23日・東京ドーム)
「SMBC日本シリーズ2021」第3戦は23日、東京ドームで行われ、ヤクルトが5-4でオリックスに競り勝ち、対戦成績を2勝1敗とした。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、大接戦となった第3戦にあった勝敗の分かれ目を分析した。
めまぐるしい展開のシーソーゲームだったが、要所要所でエラーと四球が絡んだ。先制したのはオリックス。3回、先頭の紅林が中前打で出塁。続く伏見がバスターエンドランを敢行して遊前へゴロを転がすと、遊撃手・西浦が痛恨のエラー。無死一、三塁とチャンスが拡大し、1死満塁となった後、宗の先制右前適時打につながった。
一方、ヤクルトが5回2死二塁のチャンスをつかむと、ここで登板したオリックス3番手のバルガスが村上、サンタナに連続四球を与えて満塁に。ここで中村が中前へ逆転の2点適時打。一塁走者のサンタナが一気に三塁へ向かうと、中堅手の福田は三塁へ送球したが、間に合わず。三塁手の宗は、中村の二進を阻止しようとして悪送球し、3点目まで献上。野口氏は「結果的には、あの宗のエラーが最も痛かった。あそこで3点を取られたことが試合全体を見渡した時にポイントとなりました」と指摘した。
オリックスは6回に杉本の2ランで追いつき、7回に吉田正の適時二塁打で勝ち越したが、その裏、サンタナが吉田凌のスライダーをとらえて決勝2ランを放った。結果的には一発が決勝打になったが、野口氏は「接戦において、エラーと余計な四球は致命傷になる。これはレギュラーシーズンでも同じですが、日本シリーズの大舞台となれば、なおさらです。この日、両チームの打線はお互いに相手のミスにそつなく付け込みましたが、オリックス側の5回の2四球とエラーは決定的でした」という。
継投のタイミングも勝敗を分けた。「ヤクルトに勝利を呼び込んだのは、4番手の石山(泰稚投手)でしょう」と野口氏。7回2死満塁の窮地に登板し、シーズン中に代打での打率.429を誇ったジョーンズを、フォークで空振り三振に仕留めた。さらに逆転して迎えた8回も続投し、3人で片づけた。そして9回には、第1戦で屈辱の逆転サヨナラ負けを喫した守護神マクガフが、走者を許しながらも逃げ切り、リベンジを果たした。
「第4戦以降も引き続き、継投のタイミング、人選、登板したリリーフ投手の出来で、試合は大きく動くでしょう」と野口氏は予想する。実力拮抗の両チームの対戦は、今後どう展開するのか全く読めない。しびれるような駆け引きがこの先も続いていきそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)