“ソフト界のイチロー”が現役続行を決めた理由 37歳を吹っ切れさせた上野由岐子の10球

究極の夢は「ヨーロッパでの国際大会開催」

 吹っ切れたきっかけは10月24日。ビックカメラ高崎と対戦した今季最終戦の最終打席だった。マウンドには、五輪3大会を共に戦った上野がいた。「2ストライクに追い込まれてから、粘って10球勝負できた。ずっと同じ時代を過ごしてきた上野さんより、先に辞めてはいけないとその時に思いました」と明かす。いまや2人は、同じグラウンドに立っているだけでお互いが励まされ、背中を押し合える間柄なのかもしれない。

 来年からは3部制・計26チームの日本リーグが再編され、東西2地区制・計16チームの「ジャパンダイヤモンドリーグ(JDリーグ)」へ生まれ変わる。上野と山田は新リーグの顔としても欠かせない存在だろう。

 とはいえ、山田は来季以降、「選手としてもできることをやっていきますが、それ以上に、ソフトボールの普及に貢献していくことが私には求められていると思います」と強調する。ソフトボールは次回の2024年パリ五輪では再び除外されることが決まっており、28年ロサンゼルス五輪での復活へ向け、競技の世界的普及が急務である。

 山田の究極の夢は「ヨーロッパでの国際大会開催に携わること」。それも、日本と米国が2大強国のソフトボールにとって、いかに欧州で人気を高めていくかが大きな課題だからだ。20年に渡って打棒を振るい続け、3度の五輪で日本を2度金メダルへ導いたレジェンドには、まだまだ求められている仕事がある。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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