「当たって砕けろ」が生んだ力づくの金星 都市対抗で“前年王者=初戦敗退”が続くワケ

バントだけではない「無死一塁でどう走者を進めるか」

 鈴木は「今年はバントのサインが出ることが本当になくて、無死一塁でどう走者を進めるかを考えてやってきた」と決勝弾への過程を振り返る。走者を進める方法は、アウトを1つ与えてしまう犠打だけではない。チームとして、コンパクトに逆方向へ打って出て、走者をさらに貯める方法を考え抜いてきた。ドームの大舞台で、練習は最高の形で実った。

 前年の王者が、1回戦で姿を消すのはこれで3年連続だ。昨年はJFE東日本、一昨年は大阪ガスが散った。予選なしで出場できる代わりに補強選手が使えないという戦力上の理由もあるが、各チームに目標にされ、どうしても受けて立つ側になってしまうのも原因だろう。鈴木も「こっちからどんどん行くぞという感じで、試合には入れてはいましたね」と打っても守っても“攻めまくって”の勝利を強調した。

 今年は2011年の東日本大震災から10年という節目に当たる。チームの本拠がある宮城県は大きな被害を出した。運輸業という特性上、当時の部員たちも震災復興に携わった。夏から秋に時期を移し、何とか行われた都市対抗では、エース・森内壽春投手(元日本ハム)が大会史上2度しかない完全試合を成し遂げ、4強入りを果たした。

 東北高出身の鈴木は、桐蔭横浜大を経て仙台へ戻り3年目。「地元に帰ってきて、家族も友達も応援してくれている。明るい気持ちや勇気を与えていこうと思ってやっている」と故郷への思いを口にする。再びの快進撃が見られるか。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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