名将も飲み込んだ“甲子園の魔力” 22安打敗戦も元燕右腕「負けたと思ってない」ワケ
名将がまさかのスクイズ失敗「言葉にできない不思議な力があるんです」
この年に日章学園を初の甲子園出場に導いたのは中村好治監督(現・愛知啓成)だ。中村監督はその後、2014年には三重で準優勝。小中高大、社会人と、プロ以外すべての世代の監督を経験し、則本昂大投手(楽天)らを育てた名将だ。片山氏は「最高の監督」と断言する恩師に、今でも酒の席で「なんで負けたんですか?」と冗談を言う。
普段はスクイズをしなかったのに「なぜかあの試合だけスクイズをさせたんです」。この問いに監督は「俺も悩んでたんだ。プレッシャーがすごかった。自分のいつもの野球をやればよかった」と振り返るという。それから12年後の2014年の夏。三重を率いていた中村監督はついに大阪桐蔭との決勝に進出する。しかし、7回にスクイズ失敗し、三塁走者が挟殺となり3-4で敗れた。奇しくも名将は同じ舞台で同じ作戦に打って出たのだった。
「あのグラウンド、あの球場には言葉にできない不思議な力があるんです」
現在は東京・東福生駅前にブラジル料理店を開店するなど経営者として活躍している片山氏は力説する。「甲子園は特別。少年たちは全員が目指してほしいですよね」。歴史的な一戦を経験した右腕は、野球界からは離れているが、今でもテレビで球児たちの活躍を見守っている。
(工藤慶大 / Keita Kudo)