ヘルメットに懐中電灯、腰には命綱… 引退から20年、元オリックス「デカ」の現在地
「真っ直ぐに成長した子どもたちを見るのが幸せ」
「働いていた鉄鋼業の社長の知り合いで野球好きな人がいて、紹介してもらったのが今のエレベーター管理会社の社長でした。野球を通じた出会いに感謝しています。今の人生はなかったですから」
高橋さんはプロ野球選手の頃、派手な生活を満喫していたという。現在の生活は当時の華やかさはないかもしれない。しかし、当たり前の日常に幸せを感じている。仕事のモチベーションとなっているのが妻と3人の息子。自宅で過ごす時間が何よりの楽しみだ。息子は小学5年生、高校3年生、大学1年生と食欲旺盛。夕食のメニューが唐揚げなら3キロ、餃子なら150~200個と合宿所のような食卓になる。
「家に帰れば家族がいるので仕事に不満を持ったことはないです。高校生と大学生の息子はアルバイトをしていて、親の大変さを感じているのか、時々ごちそうしてくれます。特別な教育はしていませんが、真っ直ぐに成長した子どもたちを見るのが幸せです」
現役引退後に指導者や解説者をする元選手も少なくないが、高橋さんは野球への未練はないと言い切る。「野球を見る機会は減りました。今の一番の興味は、来年から規制が変わる安全ベルト。今までは腰だけでしたが、全身につけないと作業できない現場が出てくるので。点検ミスは重大な事故につながるので、目と耳で異変を見逃さないようにしていきたいです」。頭の中はエレベーターの安全と家族を守ることでいっぱいだ。
○高橋智(たかはし・さとし) 1967(昭和42)年1月26日、横浜市生まれ。54歳。向上高から1984年ドラフト4位で阪急に投手として入団。野手に専念した1987年に1軍デビューし、91年に23本塁打。92年には自己最多の29本塁打を放ってベストナインを受賞した。99年にヤクルトへ移籍、同年に16本塁打を記録した。2001年オフに戦力外通告を受け、翌02年に台湾プロ野球に挑戦し、シーズン途中で退団、現役引退した。NPB通算945試合出場、打率.265、737安打、124本塁打、408打点。