木下雄介さんとの“最後のLINE” 遺影に流した涙…京田が乗り越える喪失の1年
追悼試合で適時打「一生忘れることのないヒット」
2021年で、最も特別な試合。感情の制御ができない。開始前から堪えきれなかった。試合は無得点のまま終盤を迎え、8回に1点を先制した直後に第4打席が巡ってきた。2死二塁でフルカウントから逆方向に流した打球は、左翼線ぎりぎりに落ちる適時打に変わった。
「気持ちだけでどうにかなる世界じゃないのは、もう分かっています。でも、何も考えずに気持ちで打ちました」
どんな1打席でも全てを懸ける大切さ。「雄介さんのおかげ。一生忘れることのないヒットです」。一塁を蹴り、二塁にヘッドスライディング。右の拳で、ベースを目一杯たたいた。何もかも、無心。「何とか勝って、いい報告がしたかった」。試合後のお立ち台で、言葉に詰まった。
暮れていく、喪失の1年。チームはリーグ5位に甘んじ、個人としてもプロ入り最少の113試合出場にとどまった。「もっとやれるやろー」。木下さんならきっと、そう言う。目の色を変え、迎える新たな年。目指す姿は、在りし日の背番号98と重なる。
これと決めたら、猛烈に突き進む清々しさ。敵を作らず、誰からも親しまれる情の深さ。そして、大学中退から独立リーグを経て、育成契約から這い上がったしぶとさ。
遺志を継ぐなんて、簡単には言えない。「雄介さん、見ていてくださいね」。友が命を削ったグラウンドに、思いをぶつけてみせる。