補欠野手がやがて140キロ投手に 名門シニア監督が徹底する選手の将来を見据えた指導

怪我の予防、選手の適性を見極めることに注力して指導を行う

 気をつけているのは、選手の適性を見極めること。トレーナーでとして培ってきた経験を基に、シニアでは野手で活躍していても、将来的に投手として大成すると感じたら、投手を選択させる。かつて、中学時代に投手として未来を感じた右翼の補欠選手がいた。進学先の監督が竜ケ崎一高時代の先輩だった縁もあり、「投手一本で勝負させてもらえますか?」と相談。この選手は投手転向当初、3回で13四死球を与えるなど苦しい経験を積んだが、高校3年時には最速140キロ超えるまでに進化を遂げた。大学進学を経て社会人野球チームから声がかかるほどの投手にまでなったという。

 怪我予防に注意を払い、投手の球数を制限。大会前でも年間を通じて行うトレーニングを優先して継続させる。勉強面でも、希望者には練習後にマイクロバスで塾へ送るなどサポートを惜しまない。また、1年を通じて東京六大学に進学したOBに勉強会を開いてもらうこともある。「勉強をやらなくても許すチームではありません」。厳しい指導を行うのも、怪我や学力が足りずに野球を続ける選択肢を減らしてしまう選手を何人も見てきたからだった。

 選手の将来を見据えた指導の原点は、自身の経験にある。学生時代に勉強しなかったり、怪我に悩まされたりしたことを後悔している。「野球ができれば何でも許される。そのスタンスで来てしまった。僕は気付くのが遅かったんです」。自分のような後悔を選手たちにはしてほしくない――。トレーナーで得た経験を基に、選手の未来を見た指導を続ける。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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