鷹・柳田が“敵に塩を送る”理由 なぜ他球団の若手を自主トレに受け入れるのか?
清宮や安田が強敵になっても「打たれても自分が打てばいい」
12日に佐賀・嬉野市内で行っている自主トレを報道陣に公開したソフトバンクの柳田悠岐外野手。昨年も参加していた後輩の真砂勇介外野手、谷川原健太捕手、ロッテの安田尚憲内野手、西武の戸川大輔外野手に加えて、今年は新たに日本ハムの清宮幸太郎内野手も加わり、明るい雰囲気の中で、バッティング練習などに汗を流していた。
安田、清宮という将来を嘱望される若手スラッガー2人が顔を揃えるこの「チームギータ」の自主トレ。清宮からの参加希望を伝えられた際は「清宮なんで……。責任取れんぞって感じで……」と困惑したようだが、願いを快諾した。安田や清宮が成長すれば、ソフトバンクにとっては強敵になる。ともすれば、敵に塩を送ることになりそうだが、なぜ柳田は他球団の若手を自らの自主トレに迎え入れるのだろうか?
他球団の選手同士が共に自主トレすることは珍しいことではない。柳田自身もオリックス時代の糸井嘉男外野手に願い出て、自主トレに参加していたこともある。ただ、安田や清宮が柳田に“弟子入り”していると捉えられがちだが、柳田自身の考えは少しばかり違う。「素晴らしい選手たちなんで、見て勉強になりますし、他のチームの選手とは敵ですけど、切磋琢磨してやっていって、それがいい方向にいけばいいなと思っています。どこにでもきっかけはあるんで、それを逃さないようにと思って生活しています」と、この日の練習後に語った。
柳田自身も新たな学びを求めて、毎年の自主トレに励んでいる。自分の技術や経験を伝えることは惜しまないが、その上で自分が成長できるようなヒントを、若い選手から吸収しようとしているのだ。自身も糸井の自主トレに参加し、成長に繋げてきた身。“先輩”から受け継いできたことを、“後輩”たちに還元しているという部分もあるだろう。
だからこそ、あれこれと何かを押し付けるようなことはしない。アドバイスについても「質問されたら答える程度。言うことはないです。自分を信じてやってもらえれば、自ずと結果は出るのかなと思います」と、本人たちの自主性、主体性を尊重する。そして、仮に清宮や安田が、ソフトバンクの強敵となろうとも「打たれても自分が打てばいい」と言う。
この自主トレで若手から得たヒントは「今のところないっす」と笑わせてくれるのも“柳田らしさ”か。「まだないですけど、日にちはあるんで勉強しながらやっていきます」。未来の“強敵”とも切磋琢磨し、貪欲に、真っ直ぐに成長、進化を追い求めるところが、柳田の“凄さ”と言えるのではないだろうか。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)